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同志社大の野口さんが記者会見――=ブラ拓史料の散逸を警告=早急な委員会立上げ提言

12月12日(金)

 【既報関連】同志社大学人文科学研究所嘱託研究員の野口敬子さん(兵庫県姫路市在住)は九日午後サンパウロ市内のホテルで記者会見し、先日初めてマスコミに公開されたバストスのブラジル拓殖組合(以後、ブラ拓)史料の重要性を訴えた。今後、バストス日系文化体育協会が主体となった委員会を組織し、ブラタク製糸や学識経験者に協力してもらいながら、保存と調査を進めることを提案した。
 野口さんは十八年前、五十八歳の時に初来伯し、以来、パリンチンスの高拓生についての論文を発表するなど、アマゾン開拓史を中心に研究を進めてきた。来伯は十数回を数え、阪南大学の前山隆教授らと共に、日本で日系移民史に携わる数少ない研究者の一人だ。
 バストスには八年前に調査に入り、アマゾン地域との移民史を比較する研究をしており、その調査の一環で、今回、ブラ拓史料に出会った。故・田尻鉄也さんとの親交が深く、お互いに必要な資料を探しあう関係だったが、長い間、ブラ拓史料は見つからなかった。
 今年七月頃から、予備調査としてバストス在住の宮崎將義・マリア夫妻と連絡を取り合っている段階で、同史料の存在が浮かび上がってきたという。同史料について報じた本紙九月十三日付記事により、「存在に確信を持った」そう。
 「各地で史料が持ち出されてなくなることが起きつつある。委員会を立ち上げて、保存・管理をしっかりしないと、貴重なものが散逸する危険がある」と警告する。
 例えば、故・山中三郎氏(バストス移民資料館の創立者で館長)が健在中に、「一日だけ貸してくれ」と日本の人によって持ち出された「バストス週報」は、その後、返還されず、現在日本でマイクロフィルムの形で販売されている、という。
 同ブラ拓史料も、九月に地下室に入った大学院生が一部を持ち帰っている。当時、その史料の貴重さが認識されておらず、大学院生の地下室調査に同伴した関係者が「好きなだけ持っていって良い」と許可を与えてしまったらしい。
 野口さんによれば、一九二八年から四五年の終戦までのブラ拓や海外移住組合連合会(日本側送り出し機関)の史料はほとんどない状態で、今回見つかったものは、その穴を埋める可能性のある貴重な史料だという。
 「早急にバストス文協が中心になって委員会を作り、ブラタク製糸と協力しながら、サンパウロや日本の学識経験者と保存や修復活動を公的に始めるべき」と強調する。「私にも委嘱して頂けるのなら、喜んでご協力いたします」。
 さらに、「バストスでの委員会活動が、日系社会に埋もれている史料を掘り起こすキッカケとなることを願います」と期待を込めた。
 十月二十九日に来聖していた野口さんは、九日晩の便で帰路に着いた。

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