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ブラジル&中国ビジネス=ブラジル史上最大のミッションを構成ルーラ大統領が訪中=将来握る重要な取引相手

6月1日(火)

 ルーラ大統領は、五月二十二日~二十七日の予定で中国との新たな経済交流を求め、主要閣僚七名と州知事五名、さらに企業代表者から成る六百名(三百四十社)に及ぶ史上最大の経済ミッションを組み中国を公式訪問した。対中国貿易を拡大しようとするブラジル政府の意気込みがこのミッションの規模にも表れている。ブラジル政府は、中国の他に「BRICS」と呼ばれるロシア、インド、南アフリカのエマージング諸国の大国同士の絆を深め、欧米に対抗する第三の国際勢力を築こうとしている。その中でも中国はブラジル経済の将来を握る重要取引相手国として位置づけられ、ルーラ政権の外交政策の目玉となっている。

ブラジルと中国の貿易関係
 ブラジルと中国の貿易関係は、二〇〇一年より顕著となり、二〇〇三年の輸出品の中では、大豆と鉄鉱石に代表される一次産品が目立つ(中国向け輸出の四八%は、農業と鉱業)。ブラジル側の狙いは、これをより多様化させ、対日本貿易と同じ轍(てつ)を踏まないことを意識している。
 つまり、日本との関係は、ブラジルが農産品と鉄鉱石の一次産品を輸出し、付加価値の高い工業製品を日本から輸入するという構図が定着化し、そこから脱皮できないことの不満がブラジル側にはある。しかも対日貿易や投資は、一九九〇年代以降、伸び悩み、今や貿易量は中国の半分にも満たない状況になっている。このため、ブラジル政府は中国とは一次産品のみならず、付加価値の高い工業製品の比率を高め、多様化させることを当初から目指している。
 貿易工業開発省 (MDIC)傘下の輸出促進機構 (Apex)は、コーヒー及び関連製品、食肉、加工果実、フルーツジュース、ワイン、砂糖黍焼酎、医療と歯科機器、家具、ソフトウェアー、化粧品、貴金石と宝石、スポーツ用具、天然ガスと石油、靴及び付属品、大理石とバイオテクノロジーなど、貿易の多様化を狙ったアプローチをしている。
 ブラジルから見た場合、輸出相手先国(二〇〇三年度統計)として中国は三番目に躍進し、現在は、ほぼアルゼンチンと並んでおり、近い将来米国に次ぐ第二位の輸出先になることが確実視されている。輸入相手国としては五番目であり、四番目の日本に猛追している。
 さらに重要なことは昨年ブラジルは中国貿易を通じ、貿易黒字総額の約一割に相当する二十三億八千五百万ドルの黒字を実現しており、中国は外貨獲得上から見ても米国(七十一億二千八百万ドル)に次ぐ第二位の取引相手になっている。しかも貿易量の躍進振りは、今後も拡大する傾向にある。
 本年一月から四月までで、ブラジルからの中国向け輸出は総額十五億六千七百万ドルに達しており、二〇〇三年の同時期に比較して三〇・六%の増加、また中国からの輸入は九億八百万ドルで五八・五%の伸びとなっている。政府の予想では、両国の貿易額(輸出入合計額)は二〇〇三年の六十七億ドルから、二〇〇五年は百億ドル(四九・二%増)に達すると見ている。
 しかし一方で中国から見た場合、貿易相手国としてのブラジルのポジションはそれほど目立った存在とは言えない。やはり、アジア諸国や欧米が主流であり、輸出先国のランキングではブラジルは二十四位、輸入相手国としては十七位のポジションにある。
 中国は昨年世界から四千百三十億ドルもの輸入をしているがブラジルからのシェアはわずか一・一%。輸出に至っては中国の輸出総額四千三百八十億ドルの〇・五%を占めるに過ぎない。
 つまり、ブラジルにとって中国は極めて重要な取引相手国として急成長しているが、中国からすればブラジルはまだそれほどの位置を占めるには至っていない。また、ブラジルの一万七千社の輸出企業の内、中国との経済関係を持つ企業は二千六百(一五%)であり、この数も将来的に増大して行く可能性を予想させる。(つづく、ジャパンデスク週刊ビジネス最前線より抜粋)
 

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