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コラム 

  東西の冷戦を象徴する「ベルリンの壁」が崩壊したときには世界中が驚き「まさか―」とびっくり仰天したものである。東ベルリンの市民らがブランデンベルグ門の壁を壊し西独に殺到したのは一九八九年十一月九日であり―この暴動がソ連邦の解体と東欧の崩壊に通じると予測した人々は少なかったのではあるまいか。この政治劇を成し遂げたのがレ―ガン大統領である▼俳優から政治家に転じ加州知事のあと大統領になった異例の人物である。保守主義者でありソ連を「悪の帝国」と呼び対決姿勢を鮮明にしクレムリンへの圧力を加え続けた。中距離核ミサイル交渉でも厳しい態度に徹しソ連型国家を消滅させることに成功した功績は必ずや歴史に刻まれるだろう。国内的には大型減税や規制緩和に踏み切り「小さな政府」を目指したことが九十年代の繁栄を齎しもした▼「ロン・ヤス」とされる中曽根康弘首相との友好も懐かしい。恐らく―戦後の政治家で本来の意味での対米外交を展開しえたのは中曽根首相独りだけではなかろうか。「日本列島は浮沈空母」という政治家としてはいささか不用意なものもあったけれども、レ―ガン大統領とのコンビが繰り広げたソ連への強硬なまでの方針は見事に結実したと見ていい▼レ―ガン大統領が訪日すると、首相は東京の山深いところにある日の出町の山荘に招待し囲炉裏を囲んで日本酒を傾けたの話もいい。そんな名大統領も高齢とアルツハイマー病には勝てず九十三歳で大往生し静かな眠りにつく。 (遯)

04/06/08

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