6月29日(火)
リベルダーデ広場で高倉候補が支持呼びかけ――。参院選比例区で自民党の公認として出馬したパラグアイ在住のミチオ高倉候補(63)が二十七日、リベルダーデ区内を中心に遊説、「老齢年金の一律支給の実現します」などと有権者に訴えた。海外で国政選挙候補者が選挙活動を行うのは事実上初めて。早朝、リベルダーデ体操会の一団に始まり、コロニア芸能祭や東洋祭に足を運んだ高倉候補。候補者自身の肉声で「清き一票」を呼びかけられる初めての「選挙サンデー」に有権者の関心も高まった。
二十四日の公示日には日本で第一声を上げた後、アメリカのロサンゼルスや地元パラグアイで足を運び、二十六日にサンパウロ入りした高倉候補。
サンパウロでの遊説は午前六時のリベルダーデ広場が最初の舞台となった。午前六時半ごろ、「高倉ミチオ・自由民主党公認」と書かれた赤いハッピをまとった支持者らとともに広場に現れた同候補は、「あと四年に迫った百周年祭を歴史に残るものにしたい」などと体操服姿の有権者ら約八十人に呼びかけた。握手や記念撮影のあとガルボン・ブエノ街を歩いた高倉候補は「南米は日本にとって忘れられた存在。大きな潜在能力を秘めていることをアピールしたい」とパラグアイ在住歴二十八年ならではの熱い想いを語った。演説に聞き入っていた小沢洋子さん(62)の悩みは、ブラジルでの医療問題。「保険がないと高い治療費がかかる。安い治療費でいい治療を受ける病院が欲しい」などと期待した。
午後二時にはコロニア芸能祭に飛び入りし、約千五百人の来場者に自らの公約などを訴えた。「日系人代表を国会に送る運動」などと書かれたノボリ十本を背に、たすき姿の高倉候補は「何十年も南米にいる男が、国会に出て何をするのかと思われるでしょうが、歴史的に日本は移住者を冷たく扱ってきた。今こそ、海外在住者の視点を国政に盛り込む時だ」と立候補の動機を説明。また、自らの公約として「老齢福祉金の支給実現」「デカセギ労働者の社会保障や教育制度の充実」「県費留学生制度の拡充」「四年後に迫る百年祭の成功」――の四項目を掲げた。「一人のミチオ高倉が国会に出ることは、皆さんの利益にもつながる。ぜひ、支持してください」と熱く呼びかけた。
午後二時二十分ごろに芸能祭を後にした高倉候補は、その後選挙カーに乗り、ガルボン・ブエノ街で遊説。東洋祭が開かれる日曜日ならではのにぎわいを見せる同街で「サンパウロの日系人の皆さん、ミチオ高倉でございます」などと支持を訴えながら、広場に向かった。事実上、海外では初めての選挙活動だけに、日本の新聞、テレビなど報道各社も高倉候補の足取りを追い、高い注目を集めていることをうかがわせた。
広場では選挙カーの上から、公約などを改めて訴えた高倉候補。「日本のことは日本の議員に、海外のことは私に任せていただきたい」と力強く語った同候補。途中、サンバチームの軽やかな演奏に合わせ、ステップを踏んだ高倉候補は支持者からダルマを受け取った後、特設された七夕飾りに一足早い「お願い」を書き込んだ短冊をくくりつけた。報道各社に手ごたえを問われ、「期待以上の盛り上がり。最高の手ごたえです」と興奮気味に答えた。また、自らの持論である日本の食料自給率の低さにも触れ「食は日本で一番深刻な問題。狂牛病や鳥インフルエンザなど海外で起きた問題が、すぐに大きな影響を与える」と語り、日系人の多い南米は有事の際に日本の支えとなれる、と熱く訴えた。遊説を見守った有権者の一人、加納照代さん(75)は、子供と孫が日本に出稼ぎ中だけに、公約のデカセギ問題に強い関心を持つ。「今まで投票してこなかったが、今回は別。ぜひ、高倉さんに頑張ってもらいたい」と話していた。
高倉候補は二十八日に文協などコロニア各団体を訪問した後、同日日本に帰国し、七月十日まで日本国内で選挙戦を展開する。