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昭和史 なつメロで=佐藤千夜子題材に=劇団「1980」全伯巡演

10月30日(土)

 東京の劇団1980(いちきゅうはちまる)が、日本初のレコード歌手・佐藤千夜子の生涯を昭和の流行歌でつづる「素劇 あゝ東京行進曲」をブラジル国内九都市で公演する。マナウスのアマゾナス劇場で六日上演し、ベレン、トメアス、ブラジリアなどを巡演する。サンパウロのブラジル日本文化協会での公演は二十一日。十二月にはパラグアイのイグアス移住地へも向う。
 本紙で連載中の結城亮一「あゝ東京行進曲」が原作。脚本は劇団主宰で、「日本棄民伝シリーズ」などで知られる藤田傳。演出は日本ミュージカル界のパイオニア、関矢幸雄が手掛けた。初演の一九九三年以後、上演回数は三百回を記録。第一回読売演劇大賞作品でもある。制作コーディネーターの楠野裕司さんと、秋葉なつみさんは「なつメロが盛りだくさん。ポ語字幕もつくので、高齢者から若い方まで楽しんでいただけると思う」と話す。
 劇団結成は文字通り、一九八〇年。以来、日本(日本人)とは何かを一貫して追いつづけてきた。修行の一環として農家にホームステイ、農作業に従事するなどユニークな稽古法を取り入れる。近代化の歴史から忘れ去られたような出来事や、現代社会の底辺に埋もれた事件に着眼する劇作で評価が高い。今作品では佐藤の波乱の人生を軸にしながら、庶民の「心の息吹」=「なつメロ」を通して昭和史を鮮やかに活写。約二時間の上演中、登場人物は一〇七人を数え、歌われる流行歌は五十曲にも上るという。
 舞台の時代は一九二〇~六〇年代。山形県出身の佐藤が十四歳で上京する場面から始まる。大柄な体格、山形なまり、そして奔放な性格――。ときの「新民謡」の作曲家である山田耕作、野口雨情らの目にとまり、「東京行進曲」は二十五万枚という破格の大ヒット。歌謡曲の女王・佐藤はさらなる飛躍を求めてイタリアに単身渡る。オペラを四年間学び戦時下の日本に帰国。戦線を慰問し熱い歓迎を受けるが、以前の人気を取り戻すことは叶わなかった。終戦後は芸能界から身を引き、職業を転々。スターの面影は影をひそめ、とある洋品店で万引き事件を起こしたのを契機に消息は途絶える――。そんな佐藤の人生の足跡から、激動の時代と向き合った芝居だ。
 主宰の藤田ら劇団関係者三十五人は十一月二日に着聖する。「これだけの規模の劇団が来伯し、ブラジル中を回るのはそうはないこと。地方巡業は大道具を運搬する問題が生じるが、今回は、素劇といって、ひもと箱だけで舞台が出来るよう演出が工夫されている。あやとりと積み木の原理です。ひも、箱、そして歌を組み合わせて時代と場面を表現します」と制作コーディネーターは語る。
 また、結城の原作は一九七七年にNHKで放映された朝の連続テレビ小説「いちばん星」の下敷きにもなっていると言う。
 サンパウロ市制四百五十年と日本人アマゾン入植七十五年を記念した親善公演となる。国際交流基金と文化庁が助成。
 十一月六日マナウス(アマゾナス劇場)▽七日ベレン(汎アマゾニア日伯協会)▽九日トメアス(トメアス文化協会)▽十一日ブラジリア(銀行員組合ホール)▽十四日グァタパラ(グァタパラ農事文化体育協会)▽十七日サンパウロ(CEUブタンタン)▽十九日イビウーナ(イビウーナ文化協会)▽二十一日サンパウロ(ブラジル日本文化協会)▽二十四日弓場農場▽二十七日リオ・デ・ジャネイロ(ラウラ・アウヴィン劇場)▽パラグアイ・イグアス移住地(イグアス日本人会館)。
 二十一日のサンパウロ文協公演の協力券(十レアル)は文協事務局のほか、次の団体でも入手可。援護協会、憩いの園、こどものその、希望の家、老人クラブ連合会、県連。
 

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