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活性化セミナー継続へ=JICA「支援やめない」=南米日系農協連絡協議会 一部負担で連携強化

2月4日(金)

 南米日系農協連絡協議会(原林平会長)の今年の事業目標などを決める話し合いが、第五回日系農協活性化セミナー(1月24~28日サンパウロ市で開催)で二十七日に行われた。同セミナーは営農普及対策事業としてJICAの全面的な金銭的支援のもとに行われてきたが、同事業によるセミナーは今回で終了。今後も、この種のセミナーを開催していくかどうかに議論が集中し、加盟各農協が規模に合わせ資金を自己負担してでもこの種のセミナーを続けて行くことが決まった。これを受け、JICAサンパウロ支所の石橋隆介次長も引き続き支援していく方針を打ち出した。JICA主導で進められてきた南米日系農協の連帯強化。いま、その目的に向け、南米の農協が自分たちの足で歩き始めた。

 緑の神様と呼ばれた日系農業がかつて程の輝きを失って久しい。コチアや南伯といった日系農協の巨大中央会が崩壊して以降、日系農協間の結束力が落ちると同時に活力も失せたと言われる。こうした状況の中、日系農協活性化セミナーは、文字通り各農協を活性化するためにJICAの営農普及対策事業の一環として始まった。
 同セミナーの主旨を継ぐ形で昨年一月の第四回同セミナーで発足した、南米日系農協連絡協議会の最も主要な事業は南米日系農協の結束を固めることだ。加盟農協を集め定期的にセミナーなどを開催することが期待される。
 しかし、営農普及対策事業による同セミナーの開催は今回で終了。JICAとしても「五回目で支援を打ち切るわけではないが、今回の会議で成果を出してもらい、次回からどのような形で(セミナーを)やっていくかを提示してもらいたい」(石橋次長)と、同協議会に自主性を促していた。
 原会長が「JICAは今後も支援を止めるつもりはない。今後どのような形でセミナーをやっていくかだ」と語り、議論を促した。これに対し、レジストロ農業協同組合の福澤一興理事長が「先に今後もセミナーを続けるかどうか決めるべき」と提案。司会が採決を取ったところ、満場一致で継続することになった。
 続けて、インテグラ―ダ農業協同組合の小山晃ジュリオ副理事長が「予算をJICAだけに頼るだけじゃなく、自分たちのことなのだから自腹を切る必要があるのではないか」と提案した。
 「好ましい提案。東京の方でも歓迎されると思います」と石橋次長。出席者も同調し、セミナーへの参加費を組合の規模に応じて一部自己負担することが決まった。
 各加盟農協の生産物は各農協によって異なるが、セミナーでは自分の関心外のテーマでの話し合いや講演なども行われる。そのため、「各テーマごとにセミナーを開いたらどうか」といった提案もなされた。
 これに対し、トメアスー農業協同組合の坂口わたる理事長は「特定の組合が参加しにくくなるようなテーマはやめて欲しい」と語り、ボリビアのコロニア沖縄農牧総合協同組合の島袋義和さんが「セミナーで大事なことは組合間の協力関係を築き、統合を図ること。各組合共通の関心事を話すのがいいのではないか」と続けた。
 セミナー開催の意義が見失われそうになったところで、アルゼンチンのメルコフロール切花鉢物生産者組合の森田健一さんが「今回何も知らずに参加しましたが、とても勉強になりました。花のことだけじゃなくて、みんなと会えただけでよかった。組合とはどのようにあるべきか、自分の考えが変わりました」と熱く語った。
 パラグアイの日系農業協同組合中央会の久保田洋史相談役は「ここは農協経営の方法を学ぶべきで、各自の関心のテーマはここでできた横の繋がりを使って勉強し合えばいいのではないか」と語った。
 その他、セミナーの開催地などについても話し合われた。事業計画案としては、農協間の協力促進、ホームページの作成、シニア専門家の派遣要請などの他、輸出推進の検討などがあがっているが、時間が足りず具体的な検討は幹事会にまわされることになった。
 議論の時間が十分でないことに加え、解決すべき問題はまだ多く残っているものの、自己負担を覚悟でセミナーを継続していくことが決定したことは、南米日系農協の連帯に向けて大きな一歩を踏み出したことを意味する。

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