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熱狂のカルナヴァル 日系人も踊り楽しむ=「すっごい感動」「来年も」=広島・原爆もテーマに=サンパウロ

2月8日(火)

 ウィーーーン。パレード開始のサイレンが会場に響き渡り、一気に緊張感が高まった。各校のプレジデンチ(会長)が戦いの雄たけびをあげる。カヴァキーニョが伴奏をきざみ、プッシャドールがエンヘードを歌う。徐々に先頭のコミッソン・デ・フレンチが会場に進み始め、数分後にはバテリア(打楽器隊)が迫力の大音響を轟(とどろ)かせると、パレードは最高潮を迎えた。カルナヴァルの雰囲気をむさぼる非日系人に負けじと、日本人や日系人も踊りに熱中して本番へ突入した。今年のサンパウロ市パレードは、昨年のように日本や日系人をテーマにしたサンバ学校はなかったため、日系参加者はそれほど目立たなかったが、それでも会場では思い思いにカルナヴァルを楽しんでいた。唯一、ローザス・デ・オウロ校の山車に一つは、広島の原爆をイメージしたものがあった。

■出発直前に■
 六日午前一時ごろ、頭上から突然、「ダイジョーブ、ダイジョーブ!」と声がする。仰ぎ見ると、アギア・デ・オウロ校の山車の上で、悪魔の格好をした非日系人が手招きしている。話を聞けば、三年前に六カ月間、青森に大道芸やパフォーマンスの仕事で行っていたというフランクリン・ガルシアさん(37)だ。大の親日家で、一生懸命に日本語でしゃべりかけてくる。
 「私、日本語大好き。日本の伝統、大好き」と悪魔の格好で叫ぶ。パレードを直前にして高揚した雰囲気に包まれている。
 「ずばり、優勝狙います!」とはりきるのは、カルナヴァル出場八回目となる田辺カナエさん(大阪、35)だ。「ちょっと雨が降ったんで、滑らないように気をつけます」。X―9の山車の上から微笑む。
 昨年八月頃から、同サンバ学校で練習をすると共に、三和学院のサンバ教室でも週二回ステップを磨いてきた。
 同校の最初のアーラ(隊)の先頭列に陣取るのは、ヘナータ・ミユキ・タカラさん。「もともとはカルナヴァルが嫌いだったんですけど、友達に誘われて〇二年に参加して以来、病み付きになっちゃいました」という。「初めてのパレ―ドの時、すっごい感動して。こんなに楽しくなれるものかと思いました」。
 レアンドロ・デ・イタケーラ校のアーラでアパレシーダ・イキイシさん(40、二世)は、「今年五回目です。毎年、パレードが終わると、またもう一回始めからやりたいという気分になります。カルナヴァル最高です」と頬を紅潮させながら語った。
 五日早朝七時過ぎ、七番目にパレ―ドしたローザス・デ・オウロ校は校名にちなんだ「バラ(ローザ)の海」をテーマにし、ヴィニッシオ・デ・モラエスの詩「ヒロシマのバラ」からイメージした山車やアーラを組織し、日系人も多く参加。原爆のキノコ雲を想起させる山車には、バラ模様の浴衣を着た日系人が十数人ものった。

■パレードの後で■
 五日早朝三時過ぎ、ヴァイ・ヴァイ校のパッシスタのアーラでパレードした葛西叙江さん(31、埼玉)は踊り終えた直後、「一緒に練習してきた仲間と踊ることができて感動しました」と今にも弾けそうな笑顔を見せた。昨年、参加した時は直前に衣装を買っての参加だったが、今回は二カ月前からチームに混じって練習を重ねてきたため、仲間との一体感を感じることができた。喜びもひとしおだ。
 「バテリアの響きに魅了されて参加しようと思った」と語るのは、モシダーデ・アレグレ校の佐藤ナタ―リャさん(18)。初めての参加だ。「ブラジルの魂を感じました」。
 畑田エリオさん(二世、51)は夫婦で、レアンドロ・デ・イタケーラ校のパレードに加わった。「参加できてとてもうれしいです。来年もまた参加しますよ」と興奮気味。初参加にしてカルナヴァルの味をしめてしまったようだ。
 日本からも多くの見物客が来た。清水信さん(34、静岡)もその一人。「踊るのが好きなんです。サンバの魅力はステップですね。でもあれは真似できない」と、初めて目の前で見るカルナヴァルに圧倒された様子だった。
 「今までは見る気がしなかったけど今回始めて応募してみました」と語るのは、会場でアルバイトをしていた高野カロリーナさん(三世、24)。山梨県の県費留学を終え、先週帰国したばかり。「サンバはものすごくかっこいい。来年はどこかのチームに混じって参加したい」と話していた。

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