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日本で国際賞を受賞=遠藤菊子さんの自分史=安達シニアの指導実る=「これからブームにしたい」

3月1日(火)

 満州からの引き上げ経験などを綴った、遠藤菊子さん(86、奉天生まれ)の自分史『我が生い立ちの記』が、「私の物語・日本自分史」大賞の国際賞(日本自分史学会)を受賞した。ブラジル老人クラブ連合会(重岡康人会長)に派遣されているJICAシニアボランティア、安達正子さん(介護福祉士)の指導で完成した作品の一つ。二十五日午後五時から、サンパウロ市リベルダーデ区の同連合会で記者会見が開かれ、遠藤さんは「思いがけず、賞をいただくことが出来て驚いています」などと喜びを語った。
 安達さんは同著を「よくまとまっている上に、心打たれる内容だ」と絶賛している。小見出しを加えるぐらいで、赤を入れる必要はなかった。
 旧ソ連兵の侵攻に怯えながらも、子供四人を無事に祖国に連れ帰ることが出来た遠藤さん。「思い出したくないくらい辛い体験で、戦後十年はサイレンの音を聞くだけで、鳥肌が立った」。当時の心情が、素直に表現されている。
 安達さんは、健康診断などのために昨年一時帰国。知人にボランティア活動の内容を紹介したところ、後日、日本自分史学会(山梨県、土橋寿会長)の存在を知らせてくれた。
 同賞は今回で、八回目を迎える。「自分史がブーム」(安達さん)というだけあって、応募は二百七作品に達した。選考会で、白熱した議論が交わされたという。
 「ブラジルでも、自分史をつくっているということを報告するつもりだけだったんですが……」。軽い気持ちで作品を送ったので、思いがけない受賞に本人自身がビックリ。
 「後で読み返してみると、あれも書けばよかった、これも抜けているな、と悔いることもあったので、まさか賞をもらえるとは思えませんでした」と語り、受賞が励みになったようだ。
 同賞では、日野由紀さん(群馬県伊勢崎市)の『山のあなたに』を最優秀賞に、三十作品が入賞を果たした。応募動機を添付して、自分史文学館(山梨県)に、永久保存される。遠藤さんは、三月二十六日に東京短期大学で開かれる表彰式に出席予定。
 安達さんは「自分のこれまでの歩みを整理することで、これから先も生きていける自信が生まれるはず」と、ブラジルでも自分史ブームを巻き起こしていきたい考えだ。
 記者会見には、重岡会長を始め石橋隆介JICAサンパウロ次長らが出席。はなむけの言葉を送った。JICAは、安達さんが今年六月に任務を終えて帰国した後も、自分史執筆の指導が継続できるように、後任者を派遣する考えだという。

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