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デカセギ子弟教育、現状は?=ISEC、9月=シンポで問題点議論=「20年間、どの程度改善されたか」  日本からも研究者招く

5月21日(土)

 デカセギが始まって今年で二十年。文化教育連帯協会(ISEC=吉岡黎明会長)は九月十、十一日にブラジル日本文化協会で「伯日教育比較シンポジウム」を開催する。日伯の教育制度の比較をベースに、デカセギ子弟の教育問題も取り扱う。ISECとしては初めての本格的な活動となるシンポジウム。開催に向けて、吉岡会長が現況を発表した。
 二〇〇二年八月にサンパウロ市とロンドリーナ市で「比較法国際シンポジウム―日本におけるブラジル人就労者」が行われて以来、デカセギ関連の本格的なシンポジウムは、実に三年ぶりの開催となる。
 十日午前は、研究者が集まり健康状態、精神状態、労働条件、医療保険、家族、教育などデカセギにまつわる問題点について議論する。「二十年の間にどの程度まで改善されているのか発表してもらう」と問題解決に向けて期待を示した。
 午後には、主題である子弟教育の問題について専門家がスピーチ。デカセギ支援団体の講演やデカセギ帰りの生の声も聞ける。
 十一日は主に日本から招請した研究者に講演をしてもらう。しかし、中には訪伯できない研究者もいるため、その人たちの論文をCDに日伯両語で編集。当日、参加者らがそれを共有し、討論会をさらに充実させたいとの意欲を見せた。
 来月からは、六月から九月までの三ヵ月間、毎月一回、事前研究会を開き、開催に向けて準備を進めている。
 二〇〇三年十二月の統計によると、在伯子弟の約三万人が学齢期にあたり、その約三分の一が不登校だという。しかし、在日ブラジル人学校のほとんどが法律上、有限会社の登録しかできず、
行政からの支援が受けられない状況。「だから授業料が高くなって学校に通わせない親が多い」と、不登校の一因を説明した。
 また、授業のレベルが低いため「友達をつくるだけ」と考えている子弟も少なくない。その結果、帰伯後、授業に付いていけないという。
 さらに、在日時に親が受けるストレスは相当なもので、子どもの面倒を見切れないなど、子弟教育に関する問題の根は深いようだ。
 「これからはブラジル人、日本人と分かれずに、一緒に問題解決をしていく支援団体を設立してほしい」と話し、「二十六日からのルーラ大統領訪日を機に、もっと両国政府がデカセギ問題に対して真剣に考えるべきだ」と熱く語った。
 そして、シンポジウム開催を足がかりに、さらに両国がデカセギ問題に対応しあえる社会へ近づくことが期待される。

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