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デカセギ問題年々増加も=ブラジル籍の弁護士は3人=浜松で活動=石川エツオさんに聞く

2005年9月28日(水)

 浜松市で外国法事務弁護士として活動する石川エツオさん(44)。日本に三人しかいないブラジル国籍の外国人弁護士として、在日ブラジル人コミュニティが抱える問題に取り組んでいる。浜松ブラジル協会の代表でもあり、仕事の関係で年に五回は日伯を往復するという。このたび静岡県弁護士会の視察団に同行してブラジルを訪れた石川さんに、サンパウロ市内の事務所で話を聞いた。
 サンパウロ州バルパライーゾの出身。サンパウロ市で法律事務所に勤めていた八九年に訪日、工場労働などを経て、在日ブラジル人の法律相談などに携わってきた。〇四年に法務省から外国人弁護士として日本で活動する資格を得て、現在は浜松市内で「外国法事務弁護士事務所」を経営している。
 代表をつとめる浜松ブラジル協会は二〇〇三年十一月、在日ブラジル人と日本人の交流を支援する団体として設立された。協会顧問には北脇保之浜松市長や商工会議所会頭などが名を連ねる。現在、浜松や名古屋を中心に二百五十人ほどの会員がいるという。
 同協会は浜松市が進めているブラジル総領事館の誘致運動でも中心的な役割を果たしている。その一方で日本で実施されるブラジル文部省の中学・高校卒業検定試験のサポートにも携わるなど、活動は多岐にわたる。
 ブラジル人子弟の不就学問題は年々大きな問題になりつつある。文部科学省は今年七月に不就学外国人児童の支援事業に乗り出した。現在全国十二の自治体で実態調査が行われている。
 不就学とならんで指摘するのが、進学しない子供たちの問題だ。
 「あと一年」「もう少ししたら帰るから」。両親の日本滞在が不安定な状態の中、中学を卒業して働きはじめる子供が多いという。「目標を持って勉強を続けるには、本人の意思だけでなく家族の支えが必要」「デカセギ二十年の歴史の中で、いいこともあったけど、子供の教育の点では損をしたと思う」と現状に警鐘を鳴らす。
 このたびの静岡県弁護士会訪問団の来伯では、ブラジルの法システム視察のため州内の裁判所や大学などの関連施設を訪れたほか、サンパウロ弁護士会を訪れ、交流を深めた。
 日本で暮らすブラジル人に母国の法律問題が起こった場合、ブラジル側の弁護士を通して解決する必要が出てくる。今回の訪問もその一環だ。今後も相互交流を進め「将来的には正式な提携が結べれば」と意欲を見せる。
 伯日比較法学会(渡部和夫会長)と協力して、浜松市で在日ブラジル人コミュニティに向けた法律イベントを開催する計画も進んでいるという。「二〇〇八年の日本移民百周年には日伯で法律シンポジウムを開きたいですね」と抱負を語った。

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