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「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〝日本人〟を意識=連載(終)=一度も会わずに結婚?!=7人の子育てに大奮闘

2005年10月4日(火)

 「子どもたちに英語、日本語、ピアノを教えて家が学校みたいになってきてる」。長男が十五歳、末っ子が一歳十一ヵ月と、七人の子を育てる森真留美さん(45、まるみ)はゴイアス州ゴイアニア市で育児に奮闘中だ。
 夫のアリピオ・ゴメス・ベロ・フィーリョさん(47)が、「日本は経済的に発展しているし将来的にも役に立つから、日本語を子どもに教えて欲しい」という考えのため、必死に日本語を教えている。「日本語でしか子どもに話さない」と言うほどの徹底ぶり。「でもさすがに七人の教育をするのは大変」と溜息を漏らす。
 「ブラジルは子どもらしさを残している子が多い。日本は少年犯罪が増えててびっくりする。息子たちは七人ともみな、伸び伸びと育ってるから今の環境は恵まれている」と話す森さんは来伯して十年になる。
 「子どもの時から容姿に激しいコンプレックスがあって一生涯私は独身だと思っていた」。しかし、一九八七年、ブラジル人の奥さんを持つ友だちに、当時アメリカにいたアリピオさんを紹介され、約二年間文通を続けた。「会わずにすむから素直に自分が出せた。文字を通して普段ではありえない自分の内面を発見していった」と振り返る。
 その後、一度も会ったことがないにも関わらず日本で結婚することになった。「初めて会う時は会ったらもうだめだと、悲壮感でいっぱいだった。でも主人は会いたかったと受け入れてくれて、その時の感激は言葉では言い表せない。こんな運命的な出会いが私の人生に用意されてたなんて感謝と喜びでいっぱいだった。その時の情景はまるでドラマにでもなるんじゃないかってくらいドラマティックだった」。
 また、祖父から結婚後に幼馴染が移民だという話を聞いた。「私にしか話さなかった。それからだんだん移民の歴史の重みを感じるようになった。今では移民として来た、たった一人の誰かのおかげで主人と結婚できて今があるんだと思うようになった」と話す。
 ブラジル人は自信過剰な人が多い、と苦笑する森さん。「日本人だったら下調べをしたりして、何事も慎重にするけど、うちの旦那は友達と素人二人でナッツのスナック菓子製造を始めた」。機械ではなく全て手作業。「効率悪いし時間かかるしあっという間に資金がなくなった」と呆れる。
 その他、駐車場でサングラスを販売するなど、さまざまな商売に挑戦した。その後、夫はアメリカに住み、独学で勉強、二、三年前から不動産仲介業を始めた。
 アリピオさんはアメリカにいる方が長い。その分、彼女は子どもの世話をしつつ、ブラジル社会に溶け込もうと努力してきた。「例えば学校。学校の仕組みも考えも理解できなかった。日本で買った文房具を長男が持って行くとすぐに盗られる。大声を張り上げて抗議しても怒鳴ったら負け。いい物を持ってくる方が悪いと言われる。その後もそんなことが何回もあったけど、もう従うように努力した」。
 それだけではなく、ブラジル人の性質に慣れるまでも苦労したそう。「子どもがお腹にいる時、産気づいたら電話してこいって近所の人に言われたけど、実際夜中に電話したら怒られる」。これは日本人には分からない感覚だと言う。「ブラジル人は表裏があって嫌だったけど、心に無い事を言ってるんじゃなくて全て本音。今では表裏じゃなく、正直だと思うようになった」と考えの変化を語る。
 「寝たら星が見えるような小屋に住んでたこともあったけど、今では日本にいたら窮屈に感じるかも。ブラジルは人にどう思われようと自分は自分だと言えちゃう国。これからも子ども七人をこの国で育てていきたい」。    終わり   (南部サヤカ記者)

■「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〝日本人〟を意識=連載(7)=「日本文化大切に」と思う=葉子さん=日語教師として伝承を

■「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〝日本人〟を意識=連載(6)=仕事が楽しいから居る=幸子さん「ブラジル、どちらかというと嫌い」

■「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〝日本人〟を意識=連載(5)=夫婦で日本文化伝承活動=藍さん=教えたい「日本にもうサムライいない」

■「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〝日本人〟を意識=連載(4)=心開いて話し合える国=えり子さん=大好きな大らかさ

■「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〝日本人〟を意識=連載(3)=移民の歌う『君が代』に〃じーん〃と=さおりさん=今、現地日会の会員

■「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〝日本人〟を意識=連載(2)=生きることの困難と楽しさ=亜希子さん、初めて知った

■「マリード夫は非日系ブラジル人」=移住して改めて〃日本人〃を意識=連載(1)=サンバに魅せられて=ゆかさん=欲しいものは必ずわが手

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