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コラム 樹海

 県連の第二十四回「移民のふるさと巡り」に同行してノロエステ沿線を回った。過去最多の百二十三人という参加者の多くが、この地に何らかのゆかりがある人で、改めてここが「移民のふるさと」であることを実感した▼ただし、笠戸丸移民が入った耕地のあるグアタパラ、最初に日本人による植民地が拓かれたレジストロ、戦前の入植者が最も多かった地域で最も豊かな移民史を刻んだノロエステなど、各個が「移民の発祥の地」「移民のふるさと」を自称している。それぞれに興味深い言い分がある▼グアタパラは笠戸丸移民が入ったとはいえ雇用農であり、永住を目指して植民地を造成したのはレジストロだ――との声も聞く。さらにグアタパラには小泉首相が降りた地という特別のステータスもある。かと思えば、マラリアにより入植者の半数が亡くなったという移民史上最大の悲劇をうんだ平野植民地、清貧の一生を移住者に捧げた上塚翁のプロミッソン、バレエで有名なユバ農場などの移住史のキラ星を山ほど抱えたノロエステこそ、との意見もある▼それぞれの歴史に意義がある。定義するのは難しい。ノロエステなどは、戦後にサンパウロ市やパラナ州へ多くが移り、現在の各地発展の基礎となっただけに「移民のゆりかご」などとも言いたくなる。本家・本元・元祖論争は尽きないが、百周年に向けて公開討論会でもしてもらって、どこが本当の「ふるさと」か、それぞれの主張を聞くのも面白い。青筋立てて議論するのではなく、ユーモアたっぷりに移民史の裏話を楽しみたい。   (深)

06/02/09

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