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コラム 樹海

 日本人がブラジルに移民して来たとき、外国人登録のために、当局から指紋を取る旨指示され、「いやだ、こんな国に来るんじゃなかった」と考えただろうか。いやだ、と思いがらも納得し、採取に応じた、と思われる。移民してきたのだ、その国の決まりに従わなければ、という割り切りがあった。もし拒否していたとすれば、国家権力によって何らかの処置をされただろう▼いま、日本訪問の際、米国を通過すれば、入国・滞在でないにもかかわらず、指紋を取られ、頭部を前と横から撮影される。この場合も、これを拒否すれば「日本に行くという目的」が果たせないから、米国当局の求めに応じている▼日本の国会でも今、外国人の入国に際し、指紋採取を義務づける法案が審議されようとしている。これに対して、野党や人権団体の反対がある。外国在住者には奇異に見える▼指紋は個人情報の最たるものだ、犯罪者でもないのに、これを国家権力側に渡すわけにはいかない、そんな主張のようである。日本政府による義務づけの考え方は、日本国内や日本人もテロの対象外であり得ない、から出ている。日本入国の〃水際〃で、犯罪者であるかもしれない外国人の指紋をおさえておこうというのだ▼入国の際、外国人が端(はな)から特定され、疑われての指紋採取なら、抵抗もあるだろう。ただ、全員への、先に備えた義務づけとなれば、話は別ではないか。移民が移住先国に指紋を登録したのは甘かったのだろうか。(神) 

 06/03/22

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