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日系初の自閉症児学級が誕生=サンパウロ市=地味ながら確実な一歩=薬に頼らない生活療法で=久山ウルグアイ大使も出席

2006年4月6日(木)

 日系人経営としてはブラジル初の、自閉症児教育学級がサンパウロ市に誕生した。各国で教育活動に携わってきた三枝たか子専門家の指導のもと、自閉症児支援三グループ(菊地義治代表)が、ビラ・マリアーナ区の日教寺の一室を間借りする形で四人の日系児童の生活療法をはじめた。生活療法は、薬に頼らず、日々の集団生活を通して自閉症の症状改善をめざす療法。日本ではじまり、北米、ウルグアイで実践されており、ブラジルでは今回はじめて導入される。四月一日に行われた開設式には、関係の深いウルグアイから久山慎一大使夫妻ら多数の来賓が出席、地味ながらも確実な一歩を踏み出した。
 一日午前十時、サンパウロ市の本門仏立宗日教寺日本語校サロンで行われた「サンパウロ自閉症児療育学級開校式」には約七十人が列席し、晴れの門出を祝った。
 自閉症児教育支援グループであるサンパウロ自閉症児父兄会、本門仏立宗日教寺ボランティア部、サンパウロ日伯援護協会福祉部の三団体が中心になった。
 南無妙法蓮華経――読経がおごそかに教室に響き、斉藤法明住職による法要が最初に行われた。続いてサロンに場所を移し、援協の具志堅茂信事務局長の司会により、まず菊地代表が開校にいたるまでの歩みを振り返り、お寺、三枝専門家ら関係者、机などの家具を無償提供したマッキー・モーベイスに感謝した。
 ウルグアイには、三枝さんがJICAシニア専門家として赴任して指導したモンテビデオ・ヒガシ学校がある。薬物療法中心の西洋的な自閉症児療育に対し、生活療法という薬に頼らない方式を採用し、成果をあげてきた。東京の武蔵野東学園が最初で、北米のボストン東スクール、モンテビデオに続き、今回のサンパウロで四校目だという。
 〇四年十月、父兄会代表の矢野高行さんの息子、顕人くん(当時6歳)がモンテビデオ校で一カ月を過ごし劇的に回復したのが縁で、「サンパウロにも」と呼びかけを続けてきた。
 矢野さんは「とうとうというか、私にとりましては待ちに待っていたことで、夢のようで感無量です」と開校を喜ぶ。矢野さんの父、正敬さんもわざわざマレーシアから駆けつけた。
 来賓のJICA村本清美さんもあいさつし、「南米での自閉症児支援ネットワーク形成がこれでさらに進む」と高く評価した。援協の尾西貞夫副会長も「援協として、できる限りの支援をします」と確約した。
 最後に、久山大使は「西洋的でなく東洋的な、日本的な手法で困っている人に救いの手を差しのべるのは素晴らしい」と賞賛し、「大木に育っていくことを祈念します」と結んだ。
 現在は、七歳から十一歳の四人を月~金曜の五日間預かる。教員はウルグアイで三枝専門家から直接指導を受けたジョゼ・エドワルド・サントスさん一人。現在、JICAの協力により、三枝さんに長期赴任してもらうことも要請している。
 日教寺は「仮の宿」で、いずれ専用施設を持ちたいとし、当面は父兄の学費で経営するが、将来は、恵まれない児童も受け入れることを目標にする。
 二十人ぐらいの児童を預かる施設を目指し、教員の育成も図るという。菊池代表は、「ブラジル社会に貢献できる団体に育てたい。みなさんのご協力をお願いします」と語った。

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