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新しい日伯関係めざして=日伯21世紀協議会=最終提言まとまる=両国の新時代の指針に

2006年7月28日付け

 日伯の有識者が両国関係の将来について意見を交換する「日伯二十一世紀協議会」の第二回会合が二十四、二十五両日、東京の外務省で開かれ、同二十五日、小泉純一郎首相に最終的な提言書が提出された。「新たな日伯関係をめざして」と題された同文書は、政治経済、科学技術、環境など両国関係の多分野にわたる交流促進に加え、二〇〇八年の日伯交流年、ブラジル日本移民百周年を機にさらなる文化、人的交流を進めることを提言。ブラジル日系社会、在日ブラジル人社会にも一項目を割き、「日伯の懸け橋」と位置付けている。
 〇四年の小泉首相来伯と翌年のルーラ大統領訪日により設置が決まった「日伯二十一世紀協議会」。昨年十一月にリオで開かれた第一回会合に続き、今回が最終提言をまとめる第二回会合となった。日本側からは河村建夫座長(衆議、元文部科学相)はじめ五委員、ブラジル側から八人の委員が出席した。
 「新たな日伯関係をめざして」と題した同提言は七つの項目からなる。政治経済、文化にわたる各分野の協力、交流促進に加え、ブラジル日系社会と在日ブラジル人社会、二〇〇八年の日伯交流年についてもそれぞれ項をもうけ、様々な提言を行っている。

日伯の懸け橋「ニッケイ」

 「ブラジルの日系社会及び在日ブラジル人社会は両国社会の発展に一層貢献し、引き続き日伯の懸け橋となることが期待される。そのため両国は、双方のコミュニティが暮らしやすい生活環境の整備に協力する」――。
 提言書はブラジル日系社会、在日ブラジル人社会を「日伯の懸け橋」と位置付けた。貢献した一世高齢者への支援に加え、あとに続く若い日系人、在日ブラジル人子弟の相互訪問推進を求めている。
 デカセギ支援については、現在セブラエが進めているデカセギ訪日前、中、後の情報提供、訓練システムの検討に加え、社会保障についての二国間協定の必要性にも言及。
 また、日伯双方の教育機関で日・ポ語教育、日本およびブラジル研究推進を推進することや、在日ブラジル人子弟の教育状況の実態調査や、ポ語教師の養成や教材作成、奨学金制度など教育環境を整備する重要性も強調している。
 帰伯逃亡デカセギ問題で注目された日伯両国の司法協力については「引き続き緊密に協議していくべき」という表現で言及された。

08年は新たな歴史の始まり

 二〇〇八年の日伯交流年についても一項を割き、様々な事業を提案している。
 提言は、二〇〇八年の年間を通じた記念行事と活動に対し、ブラジル日系社会、在日ブラジル人社会だけでなく、両国関係者の積極的参加に期待を表明。さらに、政府、地方自治体、民間による実行委員会を早期に立ち上げること、共通のロゴマークを設けることや、募金を通じ、交流年および将来の日伯関係に役立てる基金の創設などを挙げている。
 主な事業として、文化、学術、産業など各分野での展覧会やシンポジウム、見本市の開催、各種スポーツ交流などを列挙。また、文化、芸術、技術など各分野での功労者を表彰する「日伯2008年賞」の創設や、両国の文学作品翻訳の促進、書籍や映画、ドキュメンタリーなどの共同制作も進めていくとある。
 さらに、将来を見すえた両国市民レベルの交流の重要性も挙げ、日伯交流年から五年間に、毎年、日伯両国の青年百人ずつを交流させることを提案。さらに学術・文化、スポーツなど全般にわたる交流促進のほか、観光促進にむけたビザ手続きの簡素化や、両国旅行業者の交流などにも触れている。
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 このほか、政治分野では、首脳や閣僚、議員レベルに加え、学会、芸術、スポーツ等社会各層の代表者、地方自治体間の交流促進を提言。二〇〇八年に日伯ジャーナリスト会議を開催することなどを提案している。
 経済分野では、両国間の投資、各産業にわたる技術協力の促進のほか、二〇〇八年の日伯交流年を契機に日伯EPA/FTA(経済連携協定/自由貿易協定)締結に向けた研究、議論を促進する必要性を強調。
 科学技術分野では地上デジタル日本方式採用にともなう技術移転や人材育成、エタノールなど再生エネルギー分野での協力、交流促進を求めている。温室効果ガスの排出権取引に関するクリーン開発メカニズム(CDM)など環境分野での協力も挙げられた。
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 提言書は二十五日に小泉首相へ提出された。ブラジル側でも、同国委員の帰国後、ルーラ大統領に提出される見通しだ。
 将来の日伯関係の方向性を定める提言がまとまった。それぞれの提言が、実際の動きにどれだけ反映されるかは分からないが、今後、二〇〇八年に向けた両国の準備は加速していくと予想される。

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