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好業績で50周年迎える=分離独立のKDBフィアソン=元カネボウ・ド・ブラジル=日系ビジネスの新モデルケース=社会的貢献もめざす

2006年7月29日付け

 KDBフィアソン社(社長=高橋総八郎)は、昨年十二月カネボウからMBO(経営陣による企業買収)で分離独立した。社名のKDBは、カネボウ・ド・ブラジルの継承会社であることを示す。カネボウ時代から数えて本年創立五十周年を迎え、様々な記念イベントが企画されている。
 本社はサンジョゼ・ドス・カンポス市で、従業員六百五十人。六月下旬、アニェンビー国際展示場で開催された繊維品展示会FENITには、紡績会社では唯一スタンドを出展し、業界に社名変更とその存在感をアピールした。
 五十周年を記念するプロモーション・ビデオとパンフレットを作成し、顧客をはじめ取引関係者を巡回して、新会社としての戦略方針の説明を積極的に行っている。
 サンジョゼ市制定記念日で休日だった七月二十七日には、五十周年を記念して初めてのオープンハウスを実施、三百四十人の従業員家族が改装を終えた本社工場の見学に訪れた。
 同社は昨年、売上高七千万レアル、営業利益一千万レアル(一四・五%)と好業績を収めたが、今年一~六月期はさらに営業利益率が一八%に上昇した。昨年に引き続き業界トップクラスの収益を上げる一方、独立一年目の本年約三百万レアルの設備投資を決定し、九月初旬には日本から到着する機械の据付が開始される。
 日本のカネボウは、百二十年の歴史を誇り、明治以来長く日本経済をリードしてきた老舗名門企業であるが、化粧品事業の成功を尻目に祖業の繊維事業は中国繊維企業が躍進する中、苦境に陥り、不正経理という不祥事もあって、昨年繊維事業からの全面撤退を決定した。
 日本本社が事業撤退を決めれば、ブラジルの子会社は自動的に事業閉鎖か事業売却を行うのがこれまでの通例なので、昨年はカネボウ・ブラジルの動向が日系社会でもいろいろ噂された。
 しかし、その結論はMBOで親会社から分離独立し、事業規模も雇用も維持し事業継続するというものであり、これまでに例のない「新しい日系ビジネスモデル」の誕生であったともいえる。
 MBOにあたり米国の持株会社の子会社の形を採っているが、その資本は一〇〇%日本のもので、最近日本で話題の投資ファンドの関与はなく、また新会社は外部借入金ゼロ、と財務状況も健全、事業業績は初年度から増益だという。
 〇一年、サンパウロ本社事務所を閉鎖し、サンジョゼ市本社に生産・販売・管理の機能を統合、〇三年大型設備更新投資を実行、営業・業務管理体制を一新、社内の会議、書類なども日本語からポ語、英語に全面変更、と徹底した合理化努力が結実している。
 そもそも、名門鐘紡のブラジルとの関わりは、昭和初期の移民事業からと古く、その後一九五六年、当時日本の基幹産業であった繊維事業としていち早くブラジルに進出し、これまで五十年もの長きに渡り、ブラジルの経済、産業、日系社会へ貢献してきた。
 高橋社長は「日系人をはじめ、多くの方々に支えられ五十周年を迎えることが出来た。鐘紡の伝統を活かしつつ、利益追求のみならず、社会的貢献と合理的経営を目指していきたい」と力強く語った。
 昨年、日本の鐘紡はその歴史的役割を終え、ブラジルから撤退し、そのバトンはKDBフィアソンに託された。鐘紡の伝統とDNAを継承するこの会社が次の半世紀に、いかにブラジル社会に密着し発展していくのか。「新しい日系ビジネスモデルケース」として、オーナー社長となった高橋社長の経営手腕に注目が集まっている。

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