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「戦争体験思い出そう」=『ガラスのうさぎ』ポ語版=終戦記念日を前に=西村俊治さんが出版

ニッケイ新聞 2006年8月10日付け

 戦争体験をデカセギにも知ってほしい――そんな想いから、ジャクト農機創立者の西村俊治さん(97、京都府)が『O coelho de Vidro』(原題『ガラスのうさぎ』のポ語版)を出版した。この本は、第二次大戦末期の東京空襲で次々に家族を失いながらも、けなげに生きる少女の姿が描かれている小説で、日本では二百二十万部のミリオンセラーを記録した。終戦記念日を目前にした八日、来社した西村さんは出版した動機を「みんな戦争を忘れてしまった。思い出さないといけない」と力強く説明した。
 著者の高木敏子さんと三十年来の親交がある西村さんは、すでに九カ国語で出版されているがポ語ではまだと聞き、自分が出すことを決心した。
 この小説は著者の実体験に基づいたもの。第二次世界大戦末期の東京大空襲で、無差別爆撃が行われ、母と妹を失う。ガラス工場を営んでいた父が作ってくれたガラス細工のウサギが空襲の焼跡に残っていた。そして、十二歳の主人公の目の前で、父も米軍機の機銃掃射で命を落とす・・・。
 七二年に金の星社から出版され、二百二十万部のミリオンセラーを記録した。七九年には橘祐典監督が『東京大空襲 ガラスのうさぎ』として映画化、八〇年にはNHK銀河テレビ小説でドラマ化。〇五年には終戦六十周年を記念してアニメ映画にもなった。
 西村さんは「デカセギは日本にいるのだから、彼らも戦争を知ったほうがいい」と考え、ジパング出版に依頼し、同社の村山サンドラ社長自身が翻訳を担当、千部を発行した。
 半分はサンパウロ人文科学研究所(11・3277・8616)に寄付され、午後二時から六時の間、二十五レアルで販売されている。残部は、翁が自身の学校の卒業生や招待客に配布する。
 近況を問うと「毎日、学校を覗いているよ」と元気に答えた。自身の渡伯五十周年を記念して八二年に創立したポンペイア農工学校の卒業生は七百人を超え、〇五年には西村智恵子職業学校もはじめた。
 同農工学校では、どんな家庭の生徒もトイレ掃除や洗濯をしなければならない。「ノルチで四千アルケールの農場を経営するブラジル人が息子を預けてくれた。そこの母親から感謝されたよ。ニシムラには子供を預けたけど、大人にして返してくれたって」。
 三年前に脊髄手術をしたがその後は順調だという。「やることは全部やった。いつサヨナラしてもかまわんようにしてる。明日逝ってもかまわない」。そう繰り返し、翁は高笑いした。

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