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史料館にコピー機寄贈=本紙エッセイがきっかけ

2006年9月5日付け

 「本当に助かりました。感謝です」。国際協力機構(JICA)シニアボランティアの小笠原公衛さん(58)は安堵と感謝の声を上げた。七月から学芸員として派遣されているブラジル日本移民史料館に、コピー機の寄贈があった。
 史料館関係者によれば、昨年末に機械が故障、今年に入ってからは、希望者は資料を持ち出し、街のコピー屋に行くしかない状態が続いていた。今の日本は夏休み。研究家や学生の訪問も多い。「コピーしてくれ、といわれるのが辛かった」と小笠原さんはいう。
 「ビックリした顔されますよ。日本からは考えられないですからね」。コピー機のない史料館。持ち出される貴重な史料の汚損も気になっていた。
 そんなおり、本紙が掲載しているJICAボランティアによるリレーエッセイ『最前線から』に筆を取った。
 実は小笠原さん、二十年ほど前、人文研に席を置いていたことがある。懐かしいサンパウロの風景をなぞりながら、史料館のそんな現状にも触れた。
 後日、一篤志家から「コピー機を寄贈したい」との連絡があった。ミノルタのコピー機で五千四百レアル相当。人文研と共用すること、自分の名前を公表しないことが条件だった。
 「ブラジルに来て四十年。区切りの年を迎え、お世話になっているコロニアにせめてもの恩返しのつもり」と寄せられたメッセージ。変わらないコロニアの人情に小笠原さんは感慨を新たにしている。

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