ホーム | 日系社会ニュース | 「国境を横断する視線」=基金で9作品を上映

「国境を横断する視線」=基金で9作品を上映

2006年11月2日付け

 国際交流基金サンパウロ日本文化センター主催の記録映画祭「国境を横断する視線」の試写会が八、九、十日の三日間、同センター二階文化スペースで行われる。出稼ぎに行った日系ブラジル人の子どもたちの人生観を語ったドキュメンタリー映画、「Permanencia~不変性~」や、ブラジルでの舞踏の先駆者、故楠野隆夫氏の活躍を記録した「O Marginal da Danca~楠野隆夫・ダンスの脱落者~」をはじめとする計九本の作品が上映される。開催に先立ち、石井、松家両氏が同センターで会見した。
 ブラジルで日本の身体芸術として普及し、多様な発展を遂げてきた「舞踏」。戦後移民として渡伯、五年前に亡くなった舞台芸術家の楠野氏は「文化や言語など環境のなかで『舞踏』は移り変わるもの。日本らしいものではなく、常に新しいものを作ろう」とローマニア系、インディオ系、日系のダンサーを使い、自分の芸を「舞踏」と正面きって呼ぶことを避けていた人物。
 晩年を共にした松家ヒデキさん(建築家、大学教授)の「彼の生き様を後に残したい」との思いから同作品が製作された。
 「『芸とは何か。自由というものとは何か』といつも自分に問いかけながら、自分の作品に対して満足することはなかった」と松家さんは、楠野氏の思い出を振り返る。
 「パーマネンス」は石井エーリオ監督が二〇〇四年~〇五年まで日本で滞在していた際に撮影した映像を帰国後、ドキュメンタリー化させた作品だ。
 舞台は、兵庫県神戸市。日本で経験する出稼ぎ労働者の子どもたちが直面する〃行き詰まり〃を訴えている。作品にはまた、ブラジル移民で現在、カンピーナス市在住の後藤留吉さん(98)も出演している。
 石井監督は、日本で生活する(出稼ぎの)子どもたちの「『日本人らしく生きるか。ブラジル人らしく生きるか』、どちらかを選択しなければならない状況を実感した」と話し、「どうして選ばなくてならないのか。もっと、日本とブラジルの〃融合〃を果たせられたらと願う」と製作した感想を語る。また、「ドキュメンタリーを通して日本の機関がどのようにブラジル人を支援してくれているか伝わるはず」と話していた。
 なお八日は石井監督はじめ、心理学者のシルビア・ダンタス デ・ビアギさんや経済学士の横田パウロさん、日本移民史料館館長の大井セリアさんら参加による「日系人の自己アイデンティティー」についての討論会を実施する。
 九日は松家プロデューサーほか、カトリック大学身体芸術論教授のクリスチアーネ・グレイネーさんやSergio Motta財団長のヴィウマ・モッタ、タマンドゥアー劇団のメンバーとの対談を予定している。
 問い合わせは、国際交流基金(11・3141・0110)まで。
 上映日程は次の通り=【八日】十七時~「Sol Nascente no Brasil」「Gambare」「Por do Sol」、十九時半~「Isei,Nisei,Sansei」「Permanencia」、二十一時~討論会。【九日】十七時~「A Flor da Pele」「Hia Sa Sa」「Tomie-O Traco Essencial」、十九時半~「Grupo Tamandua」「Permanencia」「Takao Kusuno-O Marginal da Danca」、二十時二十分~討論会。【十日】十九時半~「Gambare」「Permanencia」「Takao Kusuno」。

image_print