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史料館刷新に向け一歩前進=バストス市=運営委員会を設立=市民から支持される施設に=社会教育の場として

2006年12月27日付け

 バストス市は、十二月八日付けの市条例で、山中三郎記念バストス地域史料館運営委員会の発足を決めた。同市は日本移民百周年となる〇八年に、開拓八十周年を迎えるため、現在、史料館のリニューアル(刷新)を計画中。委員会は、史料館の運営、史料の管理などに行うかたわら、リニューアルに向けての準備に取り組む予定だ。委員会設立には、「日系人だけのものでなく、市民みんなから支持される史料館に」(中村茂JICA青年ボランティア)との思いが込められている。
 同史料館の開設は、サンパウロ日本移民史料館より古い一九七五年。移住者の生活を支援する目的で行われていた貯金講の残った資金を、何かバストスのために役立てよう、という発想から生まれた。史料はバストスの枠を越えて国内中から集められ、世話人として尽力した山中三郎の名をとってつけられた。
 現存史料の量ははっきりしないが、その特徴は、一万点に及ぶ写真。水野龍の「笠戸丸航海日誌」、脇山甚作の軍服、バストス移住地関連書類が収蔵品の目玉で、ほかにクジラの全身骨格などもある。
 これまで、史料館の運営はバストス文協と市が、どっちつかずの状態で行ってきた。「他の史料館や研究機関との付き合い、ホームページを立ち上げるにしても、対外的にきちんと責任をとれる主体組織が必要でした」と同史料館で司書を務めているJICA青年ボランティアの中村茂さんは話す。
 バストス市が施行した市条例には、教育文化局長や観光局の職員ら、文協(ACENBA)関係者ら、「社会教育の場として活用したい」との意向から教育団体関係者が入った。市条例には「市の開拓者の生活や活躍の歴史を保存し、収集物をより充実させるため」と目的を明記。任期は二年と定められている。
 現在、史料館リニューアルの音頭をとっているのは文協。バストス開拓記念日は奇しくも日本移民の日と同じ六月十八日で、史料館のリニューアルと開拓八十年史編纂は、記念事業の大きな柱だ。
 同史料館は、一九三一年に建設された旧病院を使用しており、歴史的建造物である建物は古く、何度かリフォームしたが「くっぴんの巣」と化しているという。展示も史料整理も不十分で、来年派遣の青年ボランティアを要請中だ。
 史料館運営委員会は早々に第一回目を開く予定で、リニューアル実現に向けて活動を開始する。近々史料館もホームページも立ち上げた(http://www.museu.bastos.sp.gov.br/)。
 「委員会ができたことが(ボタンティア活動の中で)一番喜ばしい。なぜ委員会が必要なのかを認識してもらって、きちんと(機能)すれば、他の史料館もモデルにもなれると思う」と中村さんはその意義を話した。

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