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コラム 樹海

2007年3月1日付け

 百周年記念誌がようやく動き出した。九十周年では編纂されなかったので、実に二十年ぶり。その間にデカセギブームも始まり、六世の誕生と最後の笠戸丸移民・中川トミさんの死、各地方の動き、それに百周年自体など記録すべきことは多い▼これは全伯団体が手を組んで取り組むべき事業であり、立案者の森幸一USP教授が言うように、この百年間に日本移民がブラジル文明建設に貢献した全てを残す意気込みがあってもいい▼とくに一世が残した日本語資料を収集する機会としては、今回が最後になるだろう。調査員には可能な限り全伯の移住地や集団地に足を運んでもらい、埋没、破棄される前に、なんとか保存してほしいものだ。少なくとも今ある史料は捨てずに残してほしい▼さらに重要なのは、日本移民史料館を核とした文協と地方諸団体との再ネットワーク化だ。これこそは、次の百年に受け継がれる最大の遺産に違いない。すでにサンパウロ市の史料館は各地のそれと連絡会議を設け、着々と写真集への準備を始めている。心強い限りだ▼近いうちに、刊行委員会としてサンパウロ人文研や邦字紙OBや学識経験者などにも参加してもらい、きっちりした体制を整える時期がくるだろう。すでに記念誌作りを進めている地域にも協力してもらい、より充実した体制にする必要がある▼なにをどう次世代に残していくのか──これにまさる設問はない。記念誌作りの過程で、移民史を分かりやすく綴った子供向けのポ語絵本やマンガができてもいい▼来年四月までに日伯で第一巻写真集を発刊する予定という。残された時間は多くない。官民の理解と協力が不可欠だ。(深)

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