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認知症高齢者=徘徊の原因はトイレ探し?=介護者にはたいへんだが=食事は小分けし1時間置きに=隼田助教授が「住環境」講演=「満足感継続させることが重要」

2007年3月9日付け

 北海道情報大学助教授で工学博士の隼田尚彦さんが一日、文協小講堂で「認知症高齢者に適した住環境、施設環境とは」と題した講演会を開いた。サンパウロ日伯援護協会が協力。福祉施設の関係者など約百人が会場をおとずれ、熱心に耳を傾けていた。隼田さんによれば、認知症高齢者の特徴的な症状である徘徊の原因はわかっていない。しかし、その主な目的はトイレを探しているケースが多いという。そのため、自然とトイレにたどり着ける住環境の整備が大事だと説明する。
 寝室にトイレがある家ではトイレの扉を開けたままにし、夜間でもトイレの入り口をスポットライトなどで照らす、また本人が以前から呼びなれているトイレの呼称、「便所」「Banheiro」といったプレートを本人の目線にあわせて扉に張り付けることを勧める。
 さらに認知症高齢者によくある症状で、食事を食べた記憶がないと何度も訴える場合には、一日の食事の分量を十等分にすることを提案する。「介護をする家族は大変ですが、この方法ならば一時間おきにお腹が空いたと言ってきても、一日かけて食事をもらったという満足感を満たしてあげることができます」。
 このほかに、部屋の色を赤や黄色など、明るく暖かい色に塗り替えることをすすめた。
 隼田さんは、認知症高齢者の介護には、「本人の視点にたって満足感を継続させること」が重要だという。しかし介護する家族の負担は大きいと指摘する。そのため、グループホームなどに〃引越し〃してもらい、同じような境遇の高齢者と生活形態を共有することが望ましいと主張する。
 インターネット百科事典、ウィキペディアによれば、グループホームは「病気や障害などで生活能力に困難のある人たちが、小人数で一般の住宅で地域社会に溶け込みながら生活する社会的介護形態のこと」を指す。
 典型的なタイプとしては、「施設ではなく住宅であることを重視し、利用者グループが自ら自立生活を目指して共同生活をおこない、専門スタッフらの援助を受けながら生活するもの」とある。
 隼田さんは「共同で家を借りれば、一般的な介護施設にくらべて経費を安く抑えることができる」とグループホームの利点を説明した。
 講演では隼田さんの専門である環境行動学について紹介があった。隼田さんは「人間の行動や精神状態は環境によって左右されやすい」とし、とくに認知症高齢者は環境の変化に敏感と解説した。
 加えて日本の高齢者施設の現状について、従来の大規模施設は限界にきているとして、グループホームなどの小規模施設に注目が集まっていると述べた。
 このほかストレスのない施設環境のために、絵画や家具などのインテリアを工夫すること、監視的な雰囲気をつくらないように、窓にのれんをかけるなどの具体例を紹介、参加者からは熱心にメモをとる姿がみられた。
 援協は現在、講演会の要点がはいったCDを一枚、十レアルで販売している。希望者は援協会員課(電話11・3385・6607)まで。

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