ホーム | 日系社会ニュース | 水道水のムダなくす=日伯協力、JICA調印

水道水のムダなくす=日伯協力、JICA調印

2007年4月4日付け

 サンパウロ州上下水道公社(SABESP)は三月二十八日、サンパウロ州内の水道事情を改善する「無収水対策プロジェクト」をJICA(国際協力機構)と調印した。同事業は、モデル地区で今月から三年計画で実施されるもので、五百十六万七千八百九十レアル(約二億八千万円)の事業予算を見込む。そのうち百五十五万五千九百レアルをJICAが投資する計画だ。
 無収水率とは、生活用水が浄水場から各家庭に届くまでに、どれだけ無駄な水が出ているかを示す割合で、少ないほどよい。無収水の原因は配管の老朽化による漏水、水道管への不法接続、水道メーターの不正などさまざま。サンパウロ市内の無収水率は三七%、日本の大都市圏では五%ほどになっている。
 JICA担当者によれば、高地にある大サンパウロ市圏内の住人一人が年間に使用できる水量の目安は、約二百立方メートル。国連が定める適切な量が約千八百立方メートル。
 しかし同公社の調べでは、サンパウロ市内で浄水場から水が各家庭に届くまでに一日一軒あたり、約五百十リットルの水が無駄になっている現状が続いており、具体的な対策案が以前から望まれていた。
 同事業は、サンパウロ州沿岸部のグアルジャー市やサンパウロ市ブタンタン地区をモデル地区に指定し、網状につながっている水道管を同地区内で独立させるほか、名古屋市などで採用されている強化プラスチック製の水道管などを取り付けるなどして、無収水の低下率を調べる。
 このモデル区内の実績をもとに、サンパウロ州全体に日本の技術を応用拡大させていく計画になっている。
 JICAはこのほどの調印で、新たに日本から長期専門家三人、短期専門家九人の来伯を決めている。
 また、今年中に同公社から水道管の技術者と施設管理者それぞれ十人が日本で研修する予定。研修生が学んだ技術は、日本の専門家を講師に交えてサンパウロ市レオポルジーナ区につくられた技術訓練センターで内外に広めていく構想になっている。
 同公社のジェスネル・オリベイラ代表は、席上、日本の無収水率を引用したうえで、「サンパウロ州の水道事情は大変な状態にある。日本から専門的な技術協力が得られることに感謝している」と述べた。
 小林正博JICAブラジリア支所所長は「実績のあるSABESPを通して日本の技術を広く普及してもらえれば嬉しい」と話している。

image_print