ホーム | 日系社会ニュース |  「教師を育てたい」=自閉症学級JICA三枝シニア=まず就学児童増やす=指導書執筆、ポ語版を準備=ブラジル=まだ認識乏しい

 「教師を育てたい」=自閉症学級JICA三枝シニア=まず就学児童増やす=指導書執筆、ポ語版を準備=ブラジル=まだ認識乏しい

2007年9月1日付け

 教師を育てる―。自閉症療育の専門家で、今年七月からサンパウロ自閉症児療育学級のJICAシニアボランティアとして任務についた三枝たか子さんは、そう意気込みを語る。岩手県人会会員の親睦会を兼ねて、去る八月二十六日、同県人会会館で開かれた歓迎会で、現況と今後の目標を明らかにした。
 同学級は昨年四月、サンパウロ市V・マリアナ区にある本門仏立宗日教寺を間借りしてスタート。薬物に頼らない「生活療法」を基本にし、現在、八歳から十二歳までの四人の児童が通う。
 今年五月には非日系のブラジル人教諭、マルコスさん(30)を新たに採用。昨年から指導にあたっているエドアルド教諭をふくめて三枝シニアは、「今年末までに自閉症児の行動や気持ちを良く理解してもらいたい」と二人に期待する。
 同学級保護者の矢野高行さんによれば、学級が始まってから四人の児童も大きく成長。「最初の頃は教室でじっとうずくまっていた子が、今では自発的に服をたたみ、水泳でつかうパンツも家で洗うほどです」とその成果を強調する。
 今後の課題については、学級の拡張を見据えて当面は「児童を増やすこと」。目標とする人数は八人だが、ブラジルではまだ自閉症や生活療法に関して認識が乏しく「児童が集まりにくい状況」にあるという。
 将来的には、現在の学級をもっと大きなスペースに移す計画にあり、バザーなどの各種イベントを通して費用を工面している。
 三枝シニアは現在、任期が終わったあとも生活療法をブラジルで確立できるように、と指導書を執筆しており、ポ語への翻訳もすすめている。また来年はじめ頃にはサンパウロ市内で、自閉症児療育に関する講演会を行いたいという。
 同シニアは、十年以上にわたり、ウルグアイにある自閉症児のための学校、「モンテビデオ・ヒガシ学校」の充実に尽力。同市近郊に自閉症者の自立を目指して、希望財団が〇五年に設立した職業訓練学校(名称・SAEGUSA KOZO)も同シニアの発案によるもの。「ぜひ任期中に四人の児童をつれてウルグアイへ修学旅行にいきたい」と目を輝かせている。
 【自閉症】視覚や聴覚をつかさどる中枢神経の障害が原因といわれる。国や地域にかかわらず、六百人に一人の割合で発症、八割が男性。活動や興味の範囲がせまく、周りの変化や音に敏感。言葉の発達がおくれ、コミュニケーションがうまくとれず、同じ事を繰り返すなどの特徴がある。
 【生活療法】自閉症の治療法の一つ。東京の武蔵野東学園の創設者、故・北原キヨが自閉症児を健常児と一緒に教育(混合教育)する中で生まれ、体系化された。同学園のパンフレットには「子ども自身の力で障害を乗り越えさせ、社会に自立させる方法」とある。体力づくり、心づくり、知的開発を三本柱に、食事・排泄などの基本的な生活習慣に始まり、集中力、言葉、遊び方、勉強などを成長に合わせて身につけさせる。集団での教育を行うことも特徴。

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