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■記者の眼■日伯交流年は対等か=経済大国に恥じぬ交流を

ニッケイ新聞 2008年1月15日付け

 日伯交流年が始まったが、対等に盛り上がっているだろうか。
 ブラジル最大のテレビ局GLOBOの看板番組「ファンタスチコ」は今年から毎週百周年記念のコーナーを放送中だ。最大部数を誇る週刊誌『VEJA』は昨年十二月に四十頁以上の大型特集を組んだ。新聞最大手の一つ「タルデ」紙も毎週一回、日本移民の記事を百回にわたって連載中だ。
 民間だけでなく、政府関係でも大きく盛り上がりを見せている。
 例えば、連邦政府もパラナ州百周年委員会の「夢テーマパーク」(移民史パビリオン建設構想)などに一千百五十万レアル(約六億六千万円)の支援を発表。サンパウロでも市役所が百年祭式典会場を無償提供(金銭にして四百万レアル=約二億円)することを正式に計上した。
 サンパウロ州政府教育局も昨年、三百万レアル(約一億二千万円)をかけて、「VIVA JAPAO」という日本移民史を州立小中学校の研究課題にするプログラムを実行した。これは十年先、二十年先の親日家を育てる先駆的な教育だ。
 このようにブラジル側では、日系社会とブラジル社会と政府機関が協力して日本移民百周年を祝う姿勢を見せているが、日本側はどうか。「日伯交流年」という国レベルの祭典にしたのはいいが、対等に盛り上がっているといえるだろうか。
 古美術展開催などの一般ブラジル社会向けのイベントを企画していると聞くが、本来主役であるはずの日系社会に対する目玉事業は寡聞にして知らない。「予算削減の折り、これでもなんとかかき集めてやってるんですよ」との声も聞くが、世界第二位の経済大国がそれでいいのか。
 むしろ、国際協力機構(JICA)は世界最大の日系人集団地サンパウロの「事務所」を〇三年に「支所」に格下げして人員も削減した。「百周年後には撤退」との話すら漏れ聞こえてくる…。
 今年は日本のデカセギたちにとっても祝典でもあるはずだが、日本人から盛大に祝われているだろうか。今からでも遅くない。日本にとっても、次の百年の日伯交流につながる一年にしてほしい。 (深)

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