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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年5月30日付け

 「開発」や「市場原理」が、ブラジルにとって最重要、として優先したということであろうか。さきに辞任したマリーナ・O・S・リマ環境相が、辞任理由に「ソロモンの知恵」を引き合いに出したのをみれば、そう思わざるを得ない。――こう書いただけでは分かりにくいだろう。噛み砕けば、次のようになろうか▼マリーナ氏は、ブラジルは「遺伝子組替え作物の容認」「(アマゾン地域への)カンナ畑の侵入」「(アマゾン地域への)水力発電所の建設」「森林伐採の譲歩」などをしてはいけない、とかねて主張し、その阻止を現政権の政策としておし進めるべき、としてきた。ところが自身を取り巻く状況がそれを押し通していけない、と判断したから辞任を決めた▼ソロモンの知恵は「真の愛情とはどういうものか」を王が教えた話である。王の前に、自分の子だ、と二人の女が持ち込んできた赤子を「二つに裂くか」と問い、その返答で裁いたのである▼マリーナ氏は、辞任する(譲る)ことが「裂かない」つまり、アマゾンの環境保全に対する愛情だと他に示した、そうみられている。同氏は在任約五年、ブラジルの環境保全に愛情をそそいできた。しかし、政府部内では、例えば、さきの四項目をすすめていこうとする勢力が強い。それに抗し切れなかったということである▼辞任は、環境相を「ブラジルの良心」と評価してきた人たちを失望させたようだ。失望は、為政者や利益を求める企業家の論理により、今後も続くだろう。(神)

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