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テーラ・カピシャーバは誘う=エスピリト・サント観光へ

ニッケイ新聞 2009年8月13日付け

 エスピリト・サント州(ES)と聞いて、何をイメージするだろうか。長くブラジルに住んでいる人でも、「州都はヴィトリア、かな。後は…」という人も多いのでは。多くの人がリオ止まり、もしくは飛び越えバイーアに―。そんな〃つれない〃観光客を呼び込もうと同州観光局が日系コロニアに見所をアピール。風光明媚な山間地帯に美しいプライヤ、新鮮な魚介類を使ったムケッカ・カピシャーバ、イタリア、ドイツ移民のコロニアは農村観光の先駆けだ。










 エスピリト・サント州の州都はヴィトリア。リオ・デ・ジャイロ州(南)、バイーア州(北)、ミナス・ジェライス州(西)に囲まれている。四万六千平方米、人口は三百五十万人。美しい海岸地帯を持つ。セーラ・カピシャーバと呼ばれる高原地帯の気候は年間七~二十五度と温暖で「世界で三番目に過ごし易い気候」ともいわれる。冬のフェスティバルで有名なドミンゴス・マルチンス、イタリア系移民の町ヴェンダ・ノーヴァ・ド・イミグランテなどは観光農村地帯としても有名。同州の人や場所を指す「カピシャーバ」(リオのカリオカやサンパウロのパウリスタと同義)は、ツピー・グアラニー語で「小さな畑」を指す。

写真=ドミンゴス・マルチンス市では毎年七月に「冬のフェスティバル」が開催される。オーケストラやショーロ、ロック、コーラスなど様々な音楽が楽しめる。ドイツ移民が伝える民謡や踊り、料理も魅力だ


自然の奇跡ペードラ・アズール=~馬に乗って麓まで









 ヴィトリアから内陸に約一時間。セーラ・カピシャーバといわれる高原地帯随一の観光名所が「ペードラ・アズール」だ。標高一八二二メートルの巨石に圧倒されない人はまずいないだろう。
 緑色に光る部分もあり、太陽光線の具合によっては五十種類の色に変化するとも。
 遠くから眺めるだけでなく、近くまで行っててみたい! そんな人にはエコロジーセンター「FJORDLAND」がお勧めだ。
 施設内にある講堂や図書館で環境教育も行なうほか、ノルウェー原産フィヨルド種の馬に乗ってペードラ・アズールのすぐ下まで行くことができる(一時間半と二十分のコースがある)。
 馬でのトレッキングを楽しんだら、ここでしか味わえないオーガニック・コーヒー「HEIMEN」を味わいながら、山荘のデッキで神が創り出した絶景を澄み切った空気の中で楽しむのも一興だ。
 詳しくは、「FJORDLAND」のHP(http://www.cavalgadapedraazul.com.br/)まで。

写真=威容を誇る「ペードラ・アズール」(青い石)。太陽の加減によっては、青だけでなく五十種の色に変化するともいわれる。馬での散策も楽しい。標高1822メートル


ヘルシー! ムケッカ・カピシャーバ=~新鮮な素材が決め手

 ブラジルを代表する料理の一つ、ムケッカ(Moqueca)。「美味しいんだけど、デンデ油が胃もたれするから…」と敬遠する人も多いのでは。
 ムケッカ・カピシャーバと本場バイーアの違いは、デンデ油とココナッツミルクを使わないこと。
 「あっさりしていくらでも食べられるわ。新鮮な素材を使うことが決め手よ」。そう話すのは、ヴィラ・ヴェーリャ市の人気レストラン『レジーナ・マリス』の女主人レジーナさん。
 二〇〇六年にオープンした同店は、州内の料理コンテストで上位を飾り、今ではESを代表するレストランになっている。
 週末になるとムケッカだけではなく、様々な魚介料理のほか、自慢の牛テールの煮込み「ハバーダ」を目当てに訪れる客で賑わう。
 一緒に飲むのは、やはり地元のビール「サイデイラ」だ。『Regina Maris』Av Hugo Musso 2327 Praia de Itapoa-vilha Velha,27-3299-0897

今も残るイタリア魂=~伊移民のゆりかご

 「サンタ~ルチ~ア~♪」。
 ここはヴェンダ・ノーヴァ・イミグランテのレストラン。アコーディオンの伴奏にイタリア語の歌が響く。
 六十五年の歴史を持ち、同州で最も古いコーラスグループとも言われる「Coral Santa Cecila」(会員四十人)の会合がときおり開かれる。もちろん、ヴィーニョ片手に、ケイジョとサラミは欠かせない。
 メンバーの一人、ベンジャミン・ファウチェットさん(82)さんによれば、「新天地を求めてミナス・ジェライス州に移動するイタリア移民が一八九二年に腰を落ち着けたのがこの町の始まり」だとか。
 人口一万七千人のうち約八割がイタリア系。「イタリア移民のゆりかご」と言われる所以だ。
 場所を提供するのは、町一番との呼び声も高いレストラン『ドン・ロレンゾーニ』。かつての穀物倉庫をレストランに改装、移住当時の写真や農具などが入植当時の雰囲気を偲ばせる。
 シェフのフェルナンドさんは、わさびや金柑を使ったオリジナル料理もメニューに載せる。
 「手に入れるのは難しいけど、日本の食材は好きだよ。ここのお勧め? もちろんポレンタさ!」。四角大小のポレンタでハムと乾燥トマトを挟んだ同店の看板料理だ。
 『ドン・ロレンゾーニ』(http://www.restaurantelorenzoni.com.br/)

農村ツーリズム=~全伯に先駆け

 「百年前と同じ製法です」。カシウダ・ロレンソン(73)さんは北イタリアで作られる生ハム「SOCOL」を年間千二百キロ生産する。全て手作り、添加物などは一切使用しない。
 「旅行者に振舞ったら、『商売になるんじゃない?』って言われて始め」て十八年、ツアーも六年前から受け入れ、農村観光の代表的な『ファミリア・ロレンソン』。
 四十三家族が加盟する協会AGROTUR(associacao do Agroturismo de Venda Nova)のメンバーでもある。「だけど会員のほとんどファミリアなのよ!」と笑う。
 夫のマッシモさんが住んでいた移住当時の家はそのまま残し、〃移民資料館〃として開放、「イタリア移民の歴史も伝えたい」と話す。
 セーラ・カピシャーバ地方にはこうした無農薬商品を売りにしたファゼンダが多くあり、州内はもとより多くの観光客が自然の味を求めて訪れる。 
 『Familia lorencao』BR-262,km102-TAPERA VEBDA NOVA DO IMIGRANTE(28)3546-1130

ESの聖地ペーニャ修道院=~451年の歴史歩む

 ヴィトリアの南にあるヴィラ・ヴェーリャ市に「ペーニャ修道院」はある。標高百五十四メートルの高台に建つESのシンボルだ。
 一五五八年にスペイン人宣教師フレイ・ペドロ・パラシオスが「ノッサ・セニョーラ・ダ・アレグリア」の額を携えて同地を訪れ、六二年から礼拝堂を建築、現在に至る。
 ヴィトリア湾を見渡せる礼拝堂のほか、ブラジルを代表する画家ベネジット・カリストの作品も鑑賞できる博物館もあり、同州を代表する観光地となっている。

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