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世界の若者が熱狂する=アニメの力を日本外交に=「文化習慣超えて通じる」=外務省招聘、櫻井さん講演

ニッケイ新聞 2009年11月26日付け

 「かつてビートルズがロック音楽を変えたとの思いを世界中の若者が共有したのと同じように、今はアニメが好きな世界中の若者の間では『エヴァンゲリオン』が重要な転機を代表する作品だと認識され、世界で熱く語り合える時代になりました」。日本国外務省のアニメ文化外交に関する有識者会議委員の櫻井孝昌さんが24日午後、サンパウロ市の国際交流基金日本文化センターで講演「日本アニメのパワーの秘密」を行い、世界的に高まるアニメ人気の現状を紹介しつつ、日本のソフトパワーの潜在力を外交にどう活かすかなどについての考察をのべた。同基金、在サンパウロ日本国総領事館主催。

 スペインのバルセロナには7万人も集まる巨大アニメイベントがあり、イタリアのローマの「ロミックス」には8万人が集まったが「日本人は10人だけだった」とか。世界各地で同様のイベントがさかんに行われている。櫻井さんはベトナム、ラオス、ロシアなど15カ国を講演して歩いて人気の高さを実感、「どれだけ世界で受け入れられているかを当の日本人が一番知らない」という。
 欧州最古の一つ、イタリアのボローニャ大学で講演した時、現地学生は最初から「僕らは日本のアニメで育ったとかの社交辞令はいわない」と切り出し、突っ込んだ意見のみを交換したという。例えば日本アニメにある暴力的な表現が欧州で問題になっているとの点に関し、「最終的には戦うことの無力さや正義を説いている。その一部だけ取り上げて論じるのはおかしい」などと白熱した議論が展開された。
 中東サウジアラビアでは、男性だけ集まった会場で講演し、隣の会場に女性だけ数百人が集められて映像が中継される形式だったが、櫻井さんが「ナルト」「ワンピース」などのアニメ作品名を言うたびに、隣から「キャー!」という悲鳴のような歓声が響いてきて驚いたという。「文化習慣が違っても、アニメへの想いが共有されている。常識が違っても、ポップカルチャーを通してつながっているものがあると痛感した」。
 外交面における意義として、「外交の根底にはお互いの国を好きになってもらうことがある。従来の文化外交の基本は伝統芸能だった。それと同様に、今の日本のすべてを知ってもらうためにはポップカルチャーは非常に重要です」と強調し、経済・軍事などのハードパワーだけでない外交のあり方を重視する。
 日本アニメが世界で共感される理由として、「身近な生活レベルでの現実を反映した内容」「子供向けという概念を変えた」などと挙げ、グローバル化時代ゆえに国境を超えて共通化する、現代の若者気質の繊細なヒダをなぞり、代言するかのようなきめの細かい人間性の描写があることを特長として説明した。
 「日本を好きになってくれる可能性がある世界中の若者たちと、日本がどのようにつながっていくかを考えることは、10年後、20年後の世界との関係を外交的に考えていく時に非常に大事なポイントになってきている」と締めくくった。
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 今後の予定は、リオで28日、午後1時半から4時半まで、ブラジル文学アカデミー、講堂(住所=Av. Presidente Wilson, 231、在リオ総領事館隣)で櫻井さんのファッション講演と青木さんのファッション・ショーを予定。
 リオ日系協会のロリータファッション愛好会、ブラジルモードアカデミーの若者ファッションの学生、ブラジルJPOP協会若者グループも参加する。
 その他、レシフェ、ブラジリアでも開かれる。問い合わせは各総領事館まで。

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