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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月12日付け

 今年の初寅は1月4日であり京都の鞍馬寺などへのお参りが賑やかだった。この日に毘沙門天に参るのは昔からの習俗であり、この神さまは招福と鬼門を守護し庶民の信仰は厚い。漱石の「坊ちゃん」にもちょっぴりながら登場する。こんなおめでたい日の翌5日に鳩山内閣の重鎮・藤井裕久財務相が辞意表明という破天荒が起き、永田町と政界は大いに揺れ動いた▼「健康不良」が理由とされたが、余りに唐突なことであり、「おかしいな」の感じもした。大晦日が迫った頃に検査入院したのは事実ながらーこれが辞職騒動に繋がるとは将に「政界一寸先は闇」である。旧大蔵省のエリートで財政のプロとして知られ理論家でもある。予算案の編成には頭を痛め苦心惨憺したと財務官僚らは振り返る。それもこれも小沢一郎幹事長の横紙破りの強硬な要求からである▼選挙公約では、暫定税廃止を掲げたのだが、小沢氏は官邸に乗り込み「維持」を求め首相も菅副総理も目を伏せるだけ。1人藤井財務相だけが小沢を見据えていたそうだ。元々、藤井氏は国会答弁でも「暫定税は政策的に間違っている」とし、これは公約通りに「廃止」が筋なのにー小沢幹事長の圧力で「維持」となったことへの憤懣が爆発した▼鳩山政権が発足してから4ヵ月近くになるが、小沢幹事長の発言力と権限は大きく「権力の二重構造」を指摘する向きは多い。藤井氏の辞任は、こうした「小鳩体制」への訣別状ともとれる。この騒ぎで18日からの国会は大荒れするだろうし、鳩山内閣の運営と政策展開は必ずや難しくなり、自民党の攻撃も鋭くなるのではないか。      (遯)

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