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日ブラジル際大学構想が浮上=「今度こそ実現させる」=汎米日系人協会に準備委=日語教育コースを最優先

ニッケイ新聞 2010年1月21日付け

 パンアメリカン(汎米)日系人協会ブラジル支部の日ブラジル際大学準備委員会(矢野敬崇委員長)は、19日午後同支部事務局で日ブラジル際大学建学構想について記者会見を開催、その理念を説明しコロニアへの理解と協力を呼びかけた。かつて小中高型の日伯学園構想として話題となったものが、今度は大学構想として浮上してきた。矢野委員長、岡野脩平委員がインタビューに答え、石田光正、浅海護也、福井真司、平崎靖之各委員が立ち会った。

 同構想は、96年に橋本龍太郎首相(当時、故人)が来伯してサンパウロ市の日系団体代表と面談した際に、文協が提案したもの。同首相が首脳会談でブラジル政府の協力を取り付けるなど、移民90周年の記念事業案として急浮上したが用地の手配などが遅れて白紙になった。
 01年に文協内に日伯学園検討委員会が設置し直され、2年間を経て報告提言書(小中高案と大学案の併記)が作成され、百周年記念事業に提案されたが結局承認されなかった。しかし、それまでの議論が波及してスザノ日伯学園設立、アルモニア日伯学園構想として一部結実してきた。
 この検討委員会は文協から日語センターに移され、大学構想中心に検討が続けられてきた。ところが日語センターの定款上の問題や、大学の対象が北南米各国に及ぶことから総会の承認を得て、08年5月、同委員会は同汎米協会ブラジル支部に拠点を移した。
 建学の趣旨は、日本文化の良き資質を「学問」という形で次の世代に残し、南北アメリカ各国の国際社会に貢献する若い人材の育成にある。
 南米の中心サンパウロ市につくり日本の特色を生かした学部を構成する私立総合大学として、日本、ブラジル、ラテンアメリカ諸国の学術交流センターとしての役割を担い、日本の学界、産業界と強いつながりを保つことを目指す。
 記者会見で、同委員会は昨年9月ウルグアイのモンテビデオ市で開催された汎米日系人協会総会で同構想を発表し承認を受けたこと、10月東京都で開催された海外日系人大会で発表を行ったことを報告した。
 昨年11月からは文協、県連、在聖総領事館、国際交流基金、JICA、同センター、ブラジル日本商工会議所などを訪問、各日系団体に対して説明を行い、意見を求めてきた。同10月には、同大設立趣旨と基本構想がまとめられたパンフレットも完成。
 教育学部、経営学部、文学部、農学部、医学部、環境学部、体育学部、芸術学部などの設立が掲げられるが、矢野委員長は「多くの日系団体の要望から、日本語教員免許の取得可能な教育学部の日本語教育コースの確立を最優先に考えている」と強調する。
 州立学校で日語選択科目の開講の動きがあり日語教師の要請が多い中、日語教員免許を発行できる大学が少なく公的な資格を持った日語教員が不足している状況が背景に挙げられた。
 「今度こそ実現させる」と強い意気込みの岡野委員は、「まず同コースに必要な科目を調査し、ブラジル教育省と話し合いカリキュラム作成に取り組む」と次の段階を説明した。政府機関と話し合いを進めるために二世を中心とした新委員会を設けることも検討中だ。
 そのほかの大きな課題として、大学の経営方針も並行して議論されている。現段階では、いまだ具体的な設立の時期や規模、出資機関の目処は立っていない。
 矢野会長は、「この大きな目的とビジョンを軸に設立を推進する。コロニアの皆様のご理解をお願いし、ご意見をお聞きしたい」と協力を求めた。(石田支部事務局長=電話11・7214・2888)

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