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日本食親善大使=白石テルマ、初の日系ブラジル人=「伝統的な日本食広める」=元デザイナー、異色の経歴

日系ブラジル人としては初めて任命された白石さん

日系ブラジル人としては初めて任命された白石さん

 「責任を持って、伝統的な日本食の普及に努めていきます」――日本食レストラン「藍染」のオーナー兼シェフの白石佑佳テルマさん(三世)は、「日本食普及の親善大使」就任にあたってそう決意を語った。今月10日午後に同親善大使の任命式が在聖総領事公邸で行われたときの一コマだ。日系ブラジル人で同親善大使に任命されるのは初めて。関係者ら約40人が駆けつけ、白石さんの料理に舌鼓を打ちながらその名誉を祝した。

任命式の出席者で記念写真

任命式の出席者で記念写真

 白石さんはサンパウロ市出身、サンパウロ総合大学(USP)の医学部卒。「藍染」シェフになる前は、有名ファッションデザイナーのファウス・ハテン氏のアシスタントを務めていたという異色の経歴の持ち主。その理由を、白石さんは「好きなことを学んでいった結果、自然とこのような経歴になった」と語る。
 日本食シェフを目指すようになったのは「藍染」に務め始めてから。「ずっと料理するのが好きで、お店で勉強しながら料理人としての修行を積みました」。07年から約5年間オーナーシェフの小池信也さんの下で作り方を学び、更に日本食の歴史や文化も独学で勉強した。15年に小池さんからオーナーシェフを引き継いだ。
 日本食の教室やセミナー、講演を頼まれるようになり、自然と普及活動が始まった。昨年7月、県連日本祭りでギネス世界記録に挑戦する「日本料理が一番集まるイベント」の審査員を務めた。
 昨年9月には、南米で最大規模のレストランのイベント「プラゼレス・ダ・メザ」で日本食のセミナーを開催。その他、ジャパン・ハウスで月に一度のセミナーも開く。
 食材の自然な味を活かすようにしているという。「初めて成功したと思ったのは、日本の味をブラジルの食材で出せた時。有難いことに、今では日本人の方からも『日本の日本食のよう』と喜んでいただける」と手ごたえを感じた。そこに独自性を加えるためにカラフルな食材使いや、陶芸家の仁井樹美さんの独特な器を使う等のこだわりを見せる。
 現在は後進育成に力を入れたいと語る。「自分が日本食の料理を作り始めた頃は、ポ語で日本食を学べる場所はなかった。多くのブラジル人に日本食の奥深さや、健康的な食事等を伝えていきたい」と意気込む。
 海外における日本食・食文化の普及を更に進めることを目的として、2015年から始まった「日本食普及の親善大使」。活動や情報発信を通じ、日本食・食文化の普及を進めることが期待されている。海外では、現在までに34人が任命され、ブラジルでは「藍染」の前オーナーの小池さん以来二人目だ。
 同親善大使は、各国の総領事館から推薦者を出し、農林水産省の審査委員会で決定する。3月は白石さんを含め、海外で10人が任命された。


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 在聖総領事館の中野直樹副領事によれば、白石テルマさんを日本食普及の親善大使に任命したのは「料理の手腕だけでなく、メディアに積極的出演している」ことも大きな理由なのだとか。さらに白石さんは、今後の普及活動に意欲を示し、文協等の日系団体とのイベント開催や、サンパウロ州以外にも活躍の場を広げたいと語る。現在はリオ州、マナウス州等の州外からも声がかかっているそう。そのうちブラジル全土で本格的な日本食が食べられるかも!? 一方、親善大使で「藍染」前オーナーの小池信也シェフはサンパウロ市の店を白石さんに譲ったあと、リオで店を開き、現在はポルトガルのリスボンにも出店しているとの噂。

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