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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月11日付け

 ブラジルで―少なくともサンパウロ市で市民権を得た日本食は少なくない。ヤキソバ、すし、刺身は言わずもがな、ラーメンやカレーは漫画の影響もあり、若い世代に人気のようだ。ただ、甘い味付けのものは難しいというのが定評▼砂糖を使うすき焼き、ヤキソバも甘いソースのものは不人気だ。ご飯におかずをかけるというスタイルに違和感はなかろうが、その味からか日本の国民食ともいえる牛丼は、ブラジル人の口に合わないと言われてきた▼市場調査の上だろうから、蛮勇といっては大袈裟だが、リベルダーデ大通りに日本の牛丼チェーン店『すき家』が9日に開店した。同店の海外進出は中国に次いで2カ国目。汁気は少なく甘味を抑え、底の浅い皿で供するなど、ブラジルにあわせた工夫も▼牛丼発祥の地は、意外にも世界最大の魚市場である東京・築地。厳密にいえば、移転前の1899年、日本橋にできた『吉野家』が最初となっている。明治時代に開化鍋、と庶民に持て囃された牛鍋の具を飯にかけ、立ったままで手っ取り早く摂れる食事として生まれた。現在もその1号店は築地構内にある▼海外に多くの店舗を持つ『吉野家』だが、アジア以外は米国のみ。ロスの同店内に入ったことがある。値段が安いせいか、低所得者層御用達といった印象だった。『すき家』オープン当日は日本・日系人が主だったが、どう受け入れられるだろう▼『マクドナルド』『Habibis』というファーストフードチェーン店の間に陣取った。学生街でもあるので、若い人がどういう反応を示すか。日本食の浸透度を見る意味でも興味深い。(剛)

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