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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月18日付け

 サントスに着いてペンソンからアパートに移り自炊を始めたころ料理の本によく目を通した。とは言え―フランスやイタリアなどは縁が遠く、もっぱら日本食であり、あの火との闘いの中華もちょっぴり楽しんだ。北京鍋を猛炎の中で上手く使うのがなかなかに難しく額に―いや足から頭のてっぺんまで汗にまみれたのも懐かしい▼故江上トミさんのかなり厚い和風入門書の如きものが愛用の本で勿論、カラーの写真はなく、モノクロながら造り方の説明は素人にもよくわかり大いなる助っ人だった。読 売新聞かの郷土料理12巻?では、沖縄の豚肉と昆布を煮た「ラフティ」に挑戦し、学生時代に通った居酒屋「守礼門」の味に近いかな―と、北叟笑んだりも▼江上トミさんの指南書はもう装丁も崩れボロボロながらテープで修復したりし、今もときどきページを捲る「宝物」なのである。近頃の日本では、シェフとか鉄人、達人などが流行りらしいが、朝と昼や夜の舌を楽しませるのは家庭の味であり、高級な料亭やレストランは「晴れの食べ物」と、老大らは思う▼本日只今も、お袋の味は皆なに好まれるが、お婆ちゃんから母へ、そして娘へと伝えられた包丁の技や俎板での手造りが最も美味いのである。コロニアの料理研究家・康本静子さんの「ふるさとの味」は、日本の各県の自慢料理をひとつの県から4つ選んだカラー印刷の美しい本であり、とても貴重なものでる。ポ語なので若い4世や5世にもぜひ使ってほしい。一世移民の母や父が娘さんらへのプレゼントにもいい。問合せは「コジロー出版」。電話=11・3277・4121へ。(遯)

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