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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年6月1日付け

 5年ぶりに日本を訪ねてみて、どこか重苦しい空気を感じた。金融危機以来の景気の悪化はもちろん、東日本大震災、原発事故と立て続けに起きた国難ともいえる事態を受け、テレビも新聞もその関連報道ばかり。被災地域とは直接に関係のないところですら、その空気に染まっている▼帰伯後、この週末の取材先では「震災の前に日本から商品も取り寄せ、先日届いたが放射能が怖いので、キャンセルしようかと思った。製造元は大阪だから関係ないとも思ったけど、日本は狭いから」といわれ、これが風評被害かと思った▼大阪と福島は約600キロもある。サンパウロ市とリオ市が約400キロだからマカエ以上の距離といえる。どう考えても影響はありえない▼ちなみに、日本政府が避難地域として福島原発から設定している30キロ圏内は、サンパウロ市からどれぐらいかといえば、せいぜいオザスコ24キロ、バルエリ30キロ、スザノ52キロていどだから、すぐ近くだ▼連載にあるとおり、岩手県の被災地を訪ねてみたが、現地ではどれほどの応援があっても足りない状況だ。ブラジルからも、慶祝団や視察団で来年あたりに訪日する予定のある人は、コースの一部に今回の被災地で復旧した観光地などを訪ねることをぜひ提案したい▼県連ふるさと巡り、各県人会慶祝団、スポーツ団体など、ぜひ東北にも足を伸ばし、直接顔を合わせて「がんばって」と伝えたらどうだろうか。岩手、宮城、福島各県人会と申し合わせて、受け入れ可能な観光地を訪ねたらいいのでは。風評被害をなくすべく、日系人が先頭を切って身体を張ることは、今だからこそ、とても意義深い。(深)

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