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セラードの今を歩く=家の光編集部・佐藤哲也=(3)=投資型農業、農協も立ち上げ

ニッケイ新聞 2010年5月29日付け

 ウナイはもともと、降水量の多い地域ではない。セラードには、年間1800ミリを超える地域から、ほとんど降らない地域までさまざまだ。降っても、雨季に集中し、乾季にはまったく降らないという地域もある)
 そこで、降水量の少ない地域に導入されているのが灌漑設備の「ピヴォ・セントラル(中央灌水)」だ。円形の圃場の中央から伸びた散水管で、コンパスのように円を塗りつぶすように散水する。降水量の関係で年1作しか作付けできない地域でも、このピヴォを導入することで、2年5作が可能になる。
 ただ、初期投資が1ヘクタール当たりおよそ3千ドル(約27万円)で、仮に100ヘクタールで導入すれば、2700万円もの投資が必要になる。それでも、以前は1ヘクタール当たり6千ドルが必要だったというから、かなり初期費用は抑えられるようになっている。
 イルモ氏は、100ヘクタールと50ヘクタールのコーヒー園に、このセントラル・ピヴォを導入している。100ヘクタールのコーヒー園に設置された散水管の長さは、なんと570mにもなる。
 ウナイには、404基のピヴォがあり、その農地は3万4700ヘクタールにも及ぶ。ピヴォが導入されている圃場は50~100ヘクタールが中心で、大きいものは200、小さいものでも30ヘクタールもある。
 初期投資は大きいものの、2年5作と農地をフルに活用でき、干ばつのリスクを軽減することができる。ブラジルでは、天候による不作の補償などがなく、リスクは生産者が負わなければならない。資金力があれば、農地の一部にピヴォを導入するメリットは小さくない。
 コストとの兼ね合いで、イルモ氏はピヴォを単収の高いコーヒー園に導入しているが、ウナイでは、トウモロコシとフェイジョン豆の輪作に導入されているケースが多い。
 イルモ氏は、イタリア系移民の祖父を持つ。祖父の代からコーヒーを作る農場で生まれ育った。高校卒業後3年間は農業技術大学に通い、その後、大学の経済学部に約4年間学ぶ。しかし卒業を目前にして、アフリカへのプロジェクト参加の誘いがあった。
 「大豆やトウモロコシ、米などの種子栽培や技術指導で3年間を、アフリカで過ごしたよ。行くときは迷ったけど、そのときの経験が、いま生きているね」
 83年に帰国。87年に、セラード開発プロジェクトの話があり、ウナイに入植した。そして、プロジェクト参加者たちとともに95年、コアノール農協を立ち上げ、以来、組合長として産地の先頭に立っている。
 イルモ氏の農場では、設備投資で降水量不足を補いながら規模拡大して利益をあげるという「投資型農業」を知ることができた。(つづく)

写真=ピヴォをコーヒー園の中心から撮影、車輪が畝間を通り、円を描くように散水する

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