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日本語教育リレーエッセイ=第6回=「日本語を勉強していてよかった」=安楽美幸

ニッケイ新聞 2010年11月20日付け

「美幸ちゃんは何で日本へ行った事ないのに日本語をポルトガル語の前に覚えたの?」
 日本へ行った事がない、そして日本語をポルトガル語の前に覚えたと言うとこの様な質問が返ってきますが、それは両親の教育のおかげです。
 5歳で日本語学校に通い始める前にひらがなとかたかなを教えてくれた母は、今まで10年以上も日本語教育に力をいれ、漫画や絵本を読んでくれたり、アニメなど見せてくれたりしました。母は父と一緒に「家では常に日本語を話す事」と固く言い続けてきました。
 私は少女漫画が大好きなんですが、英語版やポルトガル語版を読むのと、日本語版を読んでいる時とでは、同じ面白さや楽しさを感じることができません。何故なら、日本語特有の表現が他言語では表現できずに、本来、作者が伝えたいことを正確に伝えられないのが原因だと思います。
 幸運なことに、私は幼い頃から日本語や日本文化、ポルトガル語やブラジルの文化に接して生活してきました。無論、漫画ではなく他の日本文化、例えば諺や音楽、和歌、俳句などのおもしろさや楽しさをもっと理解していくには、さらにいろいろな日本語や日本文化を勉強していくことが必要だと考えています。だから、日本語を勉強している事により、様々な日本文化に触れ合い俳句や音楽、ことわざにからめてある意味を理解できていると思うので日本語を勉強していて本当によかったと思います。
 例えば日本舞踊を習っていた時、綺麗な着物を着て踊るだけでなく、曲の歌詞を解ってからこそ完全に踊れるものだと思っていました。歌詞の意味を理解し、感じて表現する事が大事だからです。
 日本語学習者にとって、日本人もしくは日本語しかわからない人と言葉を交わして理解してもらえるという事は非常に光栄な事であり、私も例外ではありません。家族や友達と日本語で話すのとはやはり違い、普段とは違う感覚で、「自分の日本語が本当に伝わってるんだ」と思わず考えてしまいます。そして、もしも日本語ができなかったらこの人を理解することも理解される事もできなかったのだろうと思ってしまいます。
 日本語でしか存在しない様々な言葉の中でもっとも好きな言葉は「もったいない」と「親孝行」です。
 「もったいない」は物を粗末にしないでできるだけ長い間使い、大事に扱うことを教えてくれ、「親孝行」は長年支えてきてくれた両親へのありがたみを忘れず、敬い、良く尽くすようにと教えてくれます。
 私はこのような言葉を使っているうちに知らず知らず自分の考え方に取り入れ、行動にも表れています。言葉としてだけでなく自分を律するような力があり、自分の行動や考え方等にも影響をし、日本語を勉強してきたからこそ今の自分が存在し、もし日本語を勉強していなかったら違う考え方や行動をとっていただろうと思います。日本語で学んだ「物を大切にする」「親を敬う」「礼儀ただしく」などそういう事が一番大切で一番よかったと思う理由です。
 最後は将来について話したいと思います。時が経つにつれ、世界中の国々が交流し合って、他国の言語や文化を理解し合う事が重要になっていくと思います。幼少の頃から外国語を覚えると第2外国語を覚えることが比較的、簡単だと聞きますが、私の場合も英語を勉強し始めたときは難なく覚えられ、日本語を勉強していた事にありがたみを感じました。
 私は現在日本語学校に通っていませんが、勉強に卒業はないと思います。いつまでも日本語の勉強を続け、日本語特有の言葉しか伝えられない素晴らしさをもっと覚え、自分の生き方に取り入れていき、よりよい日本語力を身につけ、よりよい生き方をしたいと思っています。今まで日本語の勉強を支援してくれた両親、そして日本語を教えてくれた先生方に感謝の言葉を送りたいと思います。

安楽美幸(あんらく みゆき)

 1993年生まれ。3世。スザノ金剛寺学園卒業生

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