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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年3月4日付け

 今週末からカーニバルが始まる。年頭からリオは水責め(山間部の大洪水)と火責め(シダーデ・デ・サンバの大火災)で祟られている。そんな中でも各サンバ・チームは半年以上かけて山車を飾り、テーマ曲を作って毎週練習を重ねてきた▼コラム子も趣味で99年から10年ほどサンパウロ市チームのバテリア(打楽器隊)に参加してきた。ディスフィーレ(パレード)といえば、派手な衣装や目のやり場にこまる格好の女性にばかり目を奪われがちだが、実はサンバのコラソン(魂)は打楽器隊にある▼踊り手の中には最後の1〜2カ月だけ練習する人もいるが、バテリアは前年9〜10月の初練習からずっと会館のどん中に陣取って演奏をする。サンパウロ市の「ヴァイヴァイ」は最多優勝回数を誇る伝統的なチームで、黒人のコムニダーデから始まったボヘミアン的な雰囲気が色濃く残っている。80年代以降に特別グループにのし上がってきた白人中心の勤勉な中産階級的チームとは一味違う▼新興勢力のバテリアは懸命に練習をして難しい拍子をどんどん盛り込む。でも伝統色の強いヴァイヴァイは、あまり練習に熱心ではない。難しい拍子を嫌い、ノリに命をかける▼しかし、400人もの打楽器隊員が一糸乱れず叩き出す一体感は言葉で表現できない。そのノリが練習会場全体に伝播して、凄まじい集団的な高揚感を生む。きっと黒人の心底に秘められたアフリカ伝来の〃魂〃なのだ。これはテレビでは伝わらない。練習場で直接聞くしかない▼普段はあまり集団行動と縁の薄い黒人がこの時はすばらしい音楽を叩き出す。ブラジル文化の底深さだ。(深)

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