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悲鳴上げる日系旅行社=訪日キャンセル、9割減=県人会の交流事業も延期=家族の反対に遭う例も

ニッケイ新聞 2011年5月6日付け

 例年の訪日者数から9割減——。3月11日に発生した東日本大震災で観光客が激減していることを受け、溝畑宏観光長官は国内外でPR活動を行なっていることが報じられている。日本政府観光局の推計では、11年3月に日本へ訪れた外国人観光客数の前年比はマイナス50%。もちろんブラジルも例外ではなく、個人客、団体客のキャンセルや延期が相次いでいる。日本への旅行を主に扱う日系旅行社からは悲鳴の声が上がっている。

 「3月、4月の団体客向けパック旅行はほとんどがキャンセルや延期。中には200人規模の団体もあったのですが…。去年の2割程度まで落ち込んでいます」
 そう苦しい状況を語る某日系旅行社の説明によれば、各県人会や宗教団体の旅程が多く組まれていたため、この両月、ポッカリと空白ができてしまったという。
 日本自体、イベントの自粛、延期が続く。「3月末に予定され、多くの予約があった浄土宗大本山知恩院が行なう『法然800年大遠忌』も10月に延期となってしまいました」
 九州新幹線開通に合わせ、4月に渡日を予定していた熊本県人会(小山田祥雄会長)は訪日を9月に延期した。
 「当初120人だった参加者が半数に。日本を知らない2、3世が多く、日伯交流の良い機会だったのだが…」と小山田会長は残念がる。
 別の日系旅行社の幹部は言う。「ブラジルからの旅行は直接被害のない西日本が中心。それでも旅行のキャンセルや規模縮小は止まらない。例年に比べ1割近くまで減少した」としながら、理由に風評被害も上げる。
 「連日原発のニュースが続き、放射線に対し未知の恐怖を抱いている。地理をよく知らず、関西も九州も全て日本と一括りで認識している」。
 続けて、「本人が行きたくても家族に強く反対されてキャンセルする例も多いようです」
 とはいえ各旅行社は今年下半期には、多少持ち直すだろうとの予測を立てているようだ。
 「上半期に延期となった旅行が紅葉シーズンの10月以降にずれ込み、ある程度は回復するのでは。あくまで希望的観測ですが」と苦笑いする。
 自然災害だけにキャンセル料を徴収するわけにはいかない。旅行社としては見込んでいた収益がなくなったうえ、新たな企画を立てても実施は半年後となるだけに今年一杯は頭を悩ませることになりそうだ。

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