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【ブラジル歴史物語】ヴァルガスの遺書

ニッケイ新聞 2011年9月10日付け

 民衆の利害を脅かす諸勢力が、再び私に襲い掛かってきた。彼らは私を非難するのではなく、侮辱する。私と戦わずして中傷するだけで、防御する権利も与えない。私が国民を、特に貧困層を守り続けることができないように、彼らは私の声を封じ込め、行動を阻止しようとしている。
 私は自分に課せられた運命に従うだけだ。民衆が何十年もの長きにわたり国際資本のグループに支配され搾取された後、私は革命を指導し、そして勝利した。解放の運動を始め、社会的自由の体制を築いた。しかし、辞職することを余儀なくされた。続いて、再び民衆の力によって政府へ戻った。すると今度は国際グループの戦略と、労働者の生活保障に反発する国内の勢力が結託した。暴利取締法は議会で否決された。最低賃金の見直しの正当性に対しては、憎悪が拡大した。国内の資源を活用することで、ペトロブラス石油公団を通して国家の自由を生み出そうとしたが、機能し始めると同時に破壊の危険に晒されている。電力公団エレトロブラスに至っては絶望なまでに妨害された。彼らは労働者が自由であることを望まない。彼らが自立の精神をもつことを望まない。(中略)
 私はもはや、私の血以外に民衆に与えられるものを持っていない。もし猛鳥がこれ以上、国民の肉と血を欲し、搾取しつづけるならば、私は自らの命を犠牲にしよう。私は、国民諸君とともに居る方法を選択する。(中略)
 憎しみには、許しをもって応えよう。私を打ち負かしたと考える者には、私の勝利をもって報いよう。民衆の僕であった私はいま、永遠の命を生きようとしている。(中略)
 私はブラジルが搾取されることと戦った。私は民衆が搾取されることと戦った。胸を張って。憎しみも、悪口も、中傷も、私の意志を打ち負かすことはなかった。私は諸君に人生を捧げた。今、私の死を捧げよう。何も恐れてはいない。穏やかに、永遠の道へと続く最初の一歩を踏み出すのだ。そして、歴史に生きるため、人生から去ろう。

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