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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月12日付け

 太平洋が陸地なら子供を背負って帰りたい—。後悔と郷愁のなかで生まれた移民哀歌も、現在、沖縄・那覇空港に立てば、過去のものと思わざるを得ないだろう。世界23カ国2地域からの県系人を迎える喜びの声が沸き起こっている▼今日12日、『第5回ウチナーンチュ大会』が幕を開ける。5年毎に人的財産である世界的ネットワークを構築しようと企画され、第1回大会(90年)には世界中から2397人、26年後の今大会は倍以上となる5181人が参加、5日間にわたり自らのルーツを確かめる▼今年8月、南米各地であった県人会周年行事を取材した沖縄タイムスの記者は「南米にこれほど沖縄を大事にしている人がいるとは」と驚き、「沖縄の情報を西語やポ語でもっと発信していければ」と〃片思い〃に気付いた様子だったが何のその。参加者らは父祖の地で迎えられた熱気を生涯忘れることがないだろう▼与那嶺真次・県人会長は講演を行ない、「苦しい時代をウチナーンチュ同士で助け合い乗り越えた。ゆとりのない無縁時代が進めば、チムグクル(思いやり)、ユイマール(助け合い)がさらに大事になってくる」と話している。国は違えど大事なことは同じ。海外で数世代を経た人間の口から、こうした言葉を聞く機会は沖縄の人にとっても大事だろう▼ブラジルからは1千人超が距離の遠さをものともしないウチナー魂を見せつける。ポ語ボランティアはわずか4人だそうだが、若い世代も多い。学んだ日本語や英語でより良い関係を作ることだろう。ルーツとの紐帯が強まれば、当地コロニアの力もまた強くなると願いたい。(剛)

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