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■記者の眼■商品の半分が税関止まり=税金は的確に使われた?

ニッケイ新聞 2012年3月6日付け

 日本の経済産業省が進める『クール・ジャパン』のブラジル市場進出支援事業の企画書には「2月28日から7〜10日間の予定でサンパウロ市内レストランにおいて展示会開催」とあったが、実際の展示会はこの日だけだった。
 少なくない出費を要したと推測されるが、たった1日の展示会で見合うほど有益な調査結果が得られたのだろうか。
 しかも展示された商品は予定されていた数の半数だけだった。日本から発送したがなんとサントス税関で止まり、スタッフが手持ちで会場まで運んだそうだ。しかも、商品の半分は未だ止まっているという。
 石川氏の挨拶によれば、後援団体としてジェトロ、総領事館、国際交流基金など政府機関などが名を連ねているというのに、なぜ税関で止まったままなのか。日本政府の肝いりプロジェクトではなかったのか—。
 石川氏に「残りの商品の展示会はあるんですか」と聞くと、「機会があれば見せたい」と具体的な目処は立っていないようだ。日本国民の税金を使って送られた商品が、日の目を見ずに終わりそうな気配だ。
 展示品はどれも目を見張るほどの高額で、一つの皿やコップが100レアル以上するものがざらだった。当日実施されたアンケート結果を聞くと「美しい。気に入った」という意見もあったが、「高くてとても買えない」という意見も少なくなかったという。「壊れやすいものは扱いにくい」などというホテル関係者もいたそうだ。
 「もっと一般の人にも手が届くような価格の商品は扱わないのか」と質問すると、「もっと安い食器でも売ればいいのかもしれないが、それだと韓国、中国製に勝てない。それは色々なところがやっていて既にわかっていること。品質勝負で行きたい」と石川氏。
 ブラジル側の企業グループのある担当者は「値段も含めての調査」としながらも「高すぎると思う。確かに商品はどれも美しいが、ごく一部の人の趣味に合うという程度で、例えばブラジル料理に合うかどうかという点もある」と手厳しい。
 2010年3月には、コンテンツの祭典「コ・フェスタ・イン・ブラジル」が同実行委員会と日本国経済産業省が主催して、サンパウロ市イビラプエラ公園ビエナル館で行われたが、あの時も大変な費用をかけた割に会場は終日閑古鳥が鳴いていた。
 民間企業主催のアニメイベントでは数万人のブラジル人若者がひしめきあうのとは好対照だった。
 このままではクール・ジャパンも二の舞になる恐れがある。どこか日本の官僚的な硬直した発想で固まっていないか、本当に現地の人間に訴える形でアピールがされているか、現地側協力者の意見が的確に取り入れられた形でプロジェクトが進められているのかなどを監査する機能はちゃんと働いているのだろうか。

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