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出版=ブラジル教育に警鐘鳴らす=USPコダト教授『ブラジルは学校から逃げた』

ニッケイ新聞 2012年3月10日付け

 サンパウロ市出身のサンパウロ総合大学心理学部教授、セルジオ・コダト氏(58、二世)=リベイロン・プレット在住=が、ブラジルの公立学校教育の実態について調査・研究した結果をまとめた書籍『O Brasil Fugiu da Escola』(Butterfly Editora、277頁)をこのほど出版するにあたり、出版記念会が13日午後6時半から、サンパウロ市のLivraria Cultura (Avenida Paulista, 2073)で開かれる。
 労働党(PT)が政権を握ってから8年以上経つ。「発足当時マニフェストとして掲げられた教育への投資が全く行なわれておらず、政府は公約を果たしていない」
 近年で教育が大幅に改善しつつある中国や韓国、タイなどに調査に訪れ「この30年間を見てもブラジルの公立学校はほとんど状況が改善しておらず、政府は国の発展が教育にかかっていることを理解していない」と指摘する。
 コダト氏らの調査でサンパウロ州内の公立学校の8割以上に校内暴力があることが判明しており、麻薬、自殺などの問題を抱える学校も少なくない状況を挙げ「都市部周辺の生徒の6割は、学校に行っていながら12歳になっても字の読み書きができない」とも。
 原因として、教師の質や待遇の悪さ、どんな生徒も落第させず自動的に進学させる政策「promocao automatica」、生徒数が増えても教師や教室の数は増えないなどの問題を挙げる。
 コダト氏がアドバイザーとして関わる、4年前に発足したリベイロン・プレットとその周辺地域の公立学校の教諭や大学の研究者からなる調査グループ「Observatorio da Violencia」は、複数の底辺校の中で最も問題のある教室を調査対象にした。
 書籍では芸術、文化、スポーツなどの情操教育を実験的に施すことで問題の生徒たちと接触し、実際に改善がみられた例や、教育レベルが落ちる結果として起こる校内暴力をどのようにすれば避けられ、改善できるかを考察している。
 書籍は全編ポ語で、32レアル。コダト氏は「教師や教育者、親にぜひ読んでもらいたい」と呼びかけている。

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