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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(12)

ニッケイ新聞 2013年9月27日

【会長さんは、東洋街の桜並木が日本帝国時代の象徴だと拗ねる中国人を説得しに行っておられますので・・・・・・、どなた様でしょうか?】
「ジョージとイイます。実は、ミヤギケンジンの方を探しているんですが、その件で調べていただこうと・・・」
【ちょっとお待ち下さい】二十秒ほど待たされた。
【代わりました。副会長の西谷と申します】
「わたくしジョージ・ウエムラと申します」
【どなたをお探しですか?】
「イデ、ゼンイツと云うボンさんで、サンパウロニッケイ新聞の記者がミヤギ県人の方だと紹介したんで、それでお電話したんです」
【いつ頃ブラジルに来られたか分かれば調べ易いのですが】
「詳しくは手紙に書いてあるんですが、二世の俺には手書は難しく・・・」
【では、その手紙持って来てください。住所はサン・ジョアキン街五四二です。その間、名前から調べておきますから】
 電話の後、ジョージはカヨ子さんが持ってきたニュースを心配顔で聞いた。それは、JA航空経営建直しの一環としてオーバーブックが頻繁に起こるサンパウロへのジャンボ機による直行便の廃止が検討されている事であった。
それから、来週の乗客リストを確認した後、旅僧が休む会議室を覗いた。
 旅僧はソファーの端によりかかり、ショルダーバックをしっかり抱いて、眠っていた。ジョージは窓のブラインドを下ろし、照明を暗くして、一人で同じ東洋街の一角にある宮城県人会館へ出向いた。

 地下は駐車場、一階は大ホール、二階は事務所と会議室、それと十人ほどが泊れる宿泊施設、屋上には大きなテラスを持つ立派な宮城県人会館で、
「西谷です」がっちりした体格で、白くなった髪を角刈りにした六十代後半の副会長はゴツイ手の握手と初対面の挨拶でジョージを迎えた。
「お問合わせの井手善一氏の資料、ありましたよ」
西谷副会長は宮城県人会会員の名簿や古い記録帳を広げた机を前に、 
「一九七一年の四月十二日に『ブラジル移民第三十八回あるぜんちな丸』でサントス港に上陸されています。この方は宗教関係の方ですね。・・・、その手紙、見せていただけませんか」
 西谷副会長はメモをとりながら渡された二通の手紙を読んで、
「仏創(ぶっそう)宗本院から海外開教師に任じられ、その翌年、サンパウロの仏創宗南米別院総監部に着任され・・・、その年に・・・、開教活動でパラナ州の奥地のローランジアへ移られ・・・、それから、この手紙を出された一九八八年、ローランジア道光山条心寺別院建立十周年記念祭をされ、もう一方の手紙はその喜びを友人に伝えたものです」(仏創宗=架空の宗教)

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