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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(13)

ニッケイ新聞 2013年9月28日

「で、そのボーズさんは、今、そのお寺に?」
「この手紙の差出人住所がローランジアの石塚さん宅ですから、そこに間借りしておられるみたいですね。ローランジアの宮城県人会に問合せてみましょう」
「それで、分かりますか?」

「サンパウロやパラナ州では、十万人規模の町にはたいてい県人会の支部が設けられていますから・・・、それに、それより小さな町でも日本人会が必ずありますから大丈夫ですよ。特にパラナ州の開拓移住地の日系人は昔から団結が強いですから」
「そうですか。俺の様に大都市に住む二世は日系コロニアルから自然に離れてしまい・・・」
「それだけ、ブラジル社会に溶け込んだと云えますが、我々一世からみると寂しいですよ」
「すみません」
「謝らなくても・・・、残念ですが時代の流れですかね。しかし、ジョージさんは立派な日本語を話され頼もしいですよ」
「親父も叔父も頑固に日本語しかしゃべらず、それで自然に・・・」
「ローランジアの件は、一週間以内に調べられると思います」
「じゃー、直接ローランジアに行った方が早いですかね」
「そんなにお急ぎですか・・・、そうだ!サンパウロの仏創宗の南米別院総監部があるお寺をお尋ねされればいいじゃないですか」
「あるんですか?」
「必ずありますよ」
「どこにあるんですか?」
「サンパウロ市近郊も入れて百以上の日系の教会やお寺があると聞いております。ですから・・・、よかったら・・・、地下鉄のプラサ・ダ・アルボレ駅近くにある『西本願寺』の今井さんをお尋ねされたら如何ですか?あの方だったら・・・」
「そのオテラ知っています。親友のオヤジさんのミサで行った事があります。時間もあるし、今行ってきます。イマイさんですね。有難う御座いました」
「その間、ローランジアの方はもっと調べておきます」
「お願いします。連絡はここにお願いします」ジョージは名刺を置いて宮城県人会館を後にした。

 三十分後、ジョージは東洋街の地下鉄リベルダーデ駅から南に七つ目のプラサ・ダ・アルボレ駅に着いた。二つのエスカレーターで一気に外に運び出され、駅前の繁華街を通り、目的のお寺に向かっていると『ゴ〜ン、・・・ ゴ〜ン』と、丁度正午の寺の鐘が聞こえてきた。

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