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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(22)

ニッケイ新聞 2013年10月12日

 ジョージが事務所に着くと、彼宛の伝言があった。

『(ローランジアのイシズカさんとれんらくがとれました。TEL:三七五四、六○六一のニシタニにレンラクしてください)』カヨ子

早速、ジョージは電話した。
「西谷副会長さんお願いします。ジョージと申します」
【少々お待ち下さい】
待構えていた様に西谷副会長が電話に出た。

【ジョージさんですか! 連絡お待ちしておりました。お早うございます】
「お早うございます。イシズカさんと連絡がついたそうですね」
【石塚さんも宮城県人会の会員でしたので、直ぐに連絡が取れました】
「で?」
【石塚さんの話では、井手善一和尚は一九七二年から彼の家に間借りして布教活動され、七五年に近辺の信者達の布施や供奉によってローランジア条心寺別院(架空の寺)を建立し活動を続け、九〇年に静養の為に帰国されたそうです】
「えっ! 日本にですか?」
【そうです】
ジョージは呆れて、
「本当ですか?! それ困りますよ」
【どうしお困りですか?】
「このボーズ、いや、このボンさんを頼りに、日本から来た若ボーズがいるんですよ。全くー、無謀で、放っておくと浮浪者になりかねない・・・・・・如何したらいいか」ジョージは困り果て、中嶋に怒りを覚えた。
【いつ頃来られたのですか? その方・・・】
「昨日です」
【何ですって?! 二十年も前に帰国された方を訪ねて昨日来たのですか、どう云う事ですかね。・・・、そのお坊さんのお名前は?】
「ナカジマ・コウジンです」
【お会いしたいですね。ここに来てもらえませんか】
「今日の午後、ブッソウ宗事務所のシュクリ和尚と会う事になっていますから、その帰りに寄らして下さい。よろしいですか?」
【六時までは必ずおりますから、どうぞ】

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