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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(160)

《(フルカワ、こんな所で何を?)》
『(悪者をなんとか自首させようと皆で拝んでいるところだ)』
《(その東洋の魔術師達が?)》
『(魔術師ではなく仏教の牧師だ。だが、彼等だけでは力が足らず困っているところだ)』
《(おれも、応援させてくれ)》
『(犯罪者の魂はダメだ。清い心の魂じゃないといけないそうだ)』
「彼にもお祈りに参加してもらえませんか?」
「奴は悪者でしたから、失格ですよ」
「今は一点の黒雲もついていません。大丈夫です」
『(パウロくさるな! 東洋の牧師が、合格だと保障した)』
《(これもお前のおかげだ)》
 パウロは、見よう見真似で、中嶋和尚達の後ろに座って両手を合わせた。
「あっ、パウロの参加で効果が出ました。森口が女から手を外しました」
 しかし、それから五分もすると、
「だんだん、元の淫らな様相に戻って来ました。意識を取り戻し、女は苦しそうにもだえ、あえぎ、ああっ! 身動きしなくなりました。あっ! 森口が女の襟を肩まで下げ下ろし・・・如何にか出来ないのか!」
「これ以上如何しようもありません! エネルギーが足りません」
 その時、祭壇に飾られた蓮の大輪が青く輝き、変化が現れた。
《あきらめないで下さい!》そう叫びながら、蓮の花の上から霊が現れた。
《先輩!こ れは? あっ、また一つ現れやがった!》
《? ! ・・・。精霊?》
 蓮の上から、また一つ、また一つと精霊が舞い降りてきた。
《これは無煙と無可視の活気精力源を持った新品の精霊達だ》
 その精霊の中から、日の丸とブラジル国旗を遠慮がちに掲げた長老の男が進み出た。
《我々は、宮城県人会館の屋上で中嶋和尚に供養していただいた精霊達です。中嶋和尚の窮地を知って応援に駆けつけました》そう言って本堂の真ん中に見る見るうちに百以上の霊が集まった。
 村山羅衆が、ざわめく宮城県人会の精霊達を本堂の一角に誘導した。
 精霊達は手作りの数珠を持ち中嶋和尚の背に向かって祈り始めた。
「千里眼画像の森口の様子が急変しました! 森口が女から手を外しました!」
 古川記者が興奮して立ち上がり、報道を続けた。
「あっ、又、千里眼像の森口は頭の傷を気にしながらも女の乳房をむき出しにし、またもや・・・。森口はまさに悪の塊です」
「奴はもはや獣だ」そう言って古川記者の言葉に苛立ってジョージは本堂から出ると、携帯でサンパウロの新米刑事アレマンに連絡した。
【(ウエムラ刑事! 連絡を待っていました)】
「(アレマン! 俺はパラナ州のローランジアにいる。早速だが、タタミがあるサンパウロの日本食レストランを捜査しろ!)」
【(タタミ?)】
「(あの、ニッポニコのマットだ! 柔道で使う・・・)」
【(そこにあの日本人が潜んでいるのですね。了解!)】
 中嶋和尚は、一定の効果が安定すると、黒澤和尚にお祈りを委ね、本堂に戻ったジョージと古川記者や村山、小川羅衆に、
「この大量のエネルギーでも、これ以上の事は出来ません。森口の悪行はなんとか抑えていますが、彼の居場所がまだハッキリわかりません。それに、領事館へ出頭させるなど到底無理です」
「中嶋さん、詳しい場所の情報をつかんで下さい」
「そうだ! 羅衆さんにあの現場へ飛んでもらいましょう」

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