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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(41)

ニッケイ新聞 2013年11月12日

「そんなもったいない仏さんではありませんよ」
「いえ、あの方達の落着いた態度と平和な顔を見ますと『観音』さまを感じます。あの細長い太鼓をしっかり抱いた若者なんか幸せ一杯の顔です」
「そう言われれば、このロビーで一番幸せな顔してますね」
「あの、ラップトップを競って操作している二人のビジネスマンですが、偶然でしょうか、時々、左手の中指を頬に当て、薬指を曲げていますね」
「ええ」
「あの恰好は未来仏の『如来』になった時、如何したらいいか思案している『弥勒菩薩』さまのポーズとそっくりです」
「未来仏とは?」
得意とする仏さまの話になると中嶋和尚は目を輝かし話しを続けた。
「『毘婆尺仏(びばしぶつ)』、『尺棄仏(しきぶつ)』、『毘舎浮仏(びしゃうぶつ)』、『拘留孫仏(くるそんぶつ)』、『;倶那含牟尼仏(くなごんむにぶつ)』、『迦葉仏(かしょうぶつ)』の『過去仏(かこぶつ)』と『現在仏(げんざいふつ)』とも呼ばれる『釈迦如来』さまを合わせて『過去七仏』と云います。それに対して、お釈迦さまの後継者として、お釈迦さまが亡くなられてから五十数億年後に次の『如来』となって現れる『弥勒菩薩』さまが『未来仏』です」
「五十数億年先ですか!?」
「そうです。それまで兜卒天(とそつてん)と云う須弥山(しゅみせん)の上空にある仏界で修業をなされているのです。その、兜卒天の一日はこの世の四百年に匹敵しますから、この仏さまには数万年後になる計算です」
「そのシュミ山は何所にあるのですか?」
「仏界の中心にある空想の山です。その山を私が好きな諸天が守っているわけです」
「五十数億年ともなると大宇宙を想像させるような世界ですね。我々には待ちきれない年月ですよ」
「西谷さんがおっしゃる通り、待ちきれない人達によって『弥勒菩薩』ではなく『弥勒如来』像が作られています。奈良の東大寺や京都の広隆寺、醍醐寺にあります」
「仏教とは本当に夢物語ですね」
「たくさんの素敵な仏さまが、私達を見守ってくれる夢の世界です。すばらしいでしょう」中嶋和尚は自慢顔で言った。
「ほんとうにすばらしいですね。・・・、この待合ロビーの雰囲気はサンパウロとは違うでしょう。中嶋和尚の仏教の目から見て、どう感じます?」
「私はまだ、教科書通りにしか判断できませんが・・・、皆さん、次の世に、六道の六つの世界の中の『修羅道』や『畜生道』酷いのになると『餓鬼道』が待っているような方も居られますね」
「次の世とは?」
「つまり、;輪廻によって生まれ変わって来る次の世界です」

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