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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2014年2月14日

 「そのうち誰か死ぬと思っていたよ」。あるベテラン日本人カメラマンはそう言った。6日にリオ市で起きた抗議行動の最中に、ブラック・ブロックの若者が放ったロジョンが、テレビ局カメラマンの頭を直撃、死亡させた事件のことだ。彼は「現場では互いに助け合うんだ。リオではサンチアゴに助けられたこともある。良い奴だった」と偲んだ▼ロジョンとは、祝典などで使う打ち上げ花火のこと。点火すると100メートル以上も楽に打ちあがり、頂点で破裂して火花を出し大音響を発する。まっすく飛ばすための箒の柄のような本体の先端に火薬がついている。持ち運び易くするためか、抗議行動では柄の部分を切っており、どこへ飛ぶか分からない状態だった▼「ロジョンはサンパウロ市のデモでも実は使われている。肩にのせる大型カメラで撮影する時は、ヘルメットの縁がカメラにぶつかるから被れない。だから危ない」という。「去年から身の危険を感じていた。警察、デモ隊、両側から嫌われているから」。昨年6月からデモ中にジャーナリストが負傷する事件は118件も起き、75%は軍警に起因する▼ロジョンに点火した犯人が捕まり、「150レアルのバイト料ほしさに参加した」と証言した。伯字紙は左派政党PSOLがデモ隊の逮捕者を支援していると報道する▼ブラック・ブロック側は「暴力を使う警察権力に対抗するには、民衆も暴力で抗議するしかない」と重ねて主張する。でも金で買われた抗議なら、思想なき破壊行動にすぎない。「W杯じゃ、もっとひどいことになるよ」。そう捨て台詞を吐いてカメラマンは去って行った。(深)

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