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ぷらっさ=三つの感動

サンパウロ  清水秀策

 昨年11月、県連の“ふるさと巡り”の一行はミナス州の泉の町カシャンブーへ旅立ちました。4台の豪華バスで連なった約150人のツアー族が投宿したのは当市切ってのホテル・グローリアでありました。此のホテルで、私は3つの大きな感動を覚えましたので紹介します。

 その1
 ホテルに降り立った私達は大変驚きました。ホテルの正面の壁に大きな日の丸が掲げられてありました。Curioso(好奇心旺盛)な私なので「日の丸への着想は?」と支配人に尋ねました。
 「私共が創業以来、4台のバスに乗りきり、150人もの日系人が来館してくださるのは前代未聞の素晴らしい“出来事”ですから。何らかの方法で感謝と敬意を表したいと思案し、日章旗掲揚と選択しました」と答えてくれました。そして「此の町では日の丸は売っておりませんので、急遽赤と白の布を買い、丸く切り抜いた赤い布を白い布の真中に縫い付けました」と説明してくれました。
 日の丸は(Retângulo)長方形でありまして、縦横の比率は、横を100とすれば縦は70、日章の直径は縦の5分の3であります。この点にまで十分考慮した跡が窺われ、誠意を顕著にする苦心がひしひしと伝わってきました。
 私は既に30回近く古さと巡りに加わってきましたが、日の丸を翻して「ようこそいらっしゃいませ」と歓迎されたのは初めてではないかと目頭が熱くなりました。

 その2
 200人ものお客さんが食事の出来る大サロンの東側の窓から5,6羽の小鳥がツアー族の頭上を飛び越え、西側の窓へ消えてゆきます。その中の2、3羽が椅子に止り、お客さんがお代わりを取りに立つと、この時ばかりと食卓に降り立ってご馳走を頬張っていました。お代わりを手に戻ってきたお客さんは、珍奇な様子にしばし呆然と見惚られていました。 所変われば品変わると言いますが、冷たいコンクリートのビルが連立するサンパウロでは、なかなか見えない“絶景”でありました。そして小鳥と共に食卓を囲んだのも初めてのことでありました。

 その3
 中級クラスのホテルではFrigo barといった小型の冷蔵庫が部屋に設置されておりまして、飲物やチョコレートなどが入れてあります。お客さんはそれを自由に消費できますが、ホテルを出る祭はチェックアウトと言って、それらの消費を清算する仕組みになっております。
 大概のホテルでは部屋の鍵を戻した後でなければ、チェックアウトはしてくれません。これはチェックアウトをした後も鍵を持っているのでFrigo barを再度使用されないための防御でもあります。
 ところが、150人以上の(Hospedes)お客さんが同時にチェックアウトの列に並べば時間を費やし、ひいてはバスの出発が遅れるので「チェックアウトは早めにして下さい」とガイドさんの伝言があり、列に並びました。私の番が来ましたので「鍵はまだ戻せませんが、チェックアウトをしてくれますか」と係の金髪嬢に尋ねますと「Senhoresは日本人でしょう、後Frigo barを使われてもきっと支払いに来てくれますので安心しております」と答えてくれました。
 旅先でこのような“お褒め”を耳にすると、私達日系人はおおいに誇らしく思うのであります。
 この「Japonês Garantido」という「信用」は日系の先輩がHonesto誠実な生き方を貫いて下さり、私達に残して下さった大きな財産であります。これからも我々日系人はこの「宝物」を損ねないよう務めなければなりません。

(2014.3.29掲載)

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