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ブラジル映画の中のジャポネス=時時代と共に変遷する役柄=(中)=百年経ってようやく家族役=「いつも日系人の役だけ」

 当地のTVドラマはイタリア移民の話が多い。移民大国だけに歴史物にはドイツ移民、イギリス人、アラブ人など様々な役柄がある。つまり、白人系の役者なら何でも演じることができる。
 しかし、金子は「僕はいつもジャポネスの役だった」と首をひねる。「何度かドイツ人の役をやらせてくれとか冗談で言ったことがあるけど、僕らの場合は外見上の制約がどうしても働く」。
 作家からすれば「ジャポネス」には先入観がある。金子は「最初は百姓、洗濯屋、フェイランテ、ファベーラのパステル屋、密売人、バール店主とか、無名でセリフもないような日本移民役、社会の下層の仕事ばかり」だったと振り返る。
 加えて「最初は日系俳優が他にいないから、家族の役ができなかった。教会の奥に間借りしている下宿人とか」という。
 「日系家族」がグローボ局ドラマに本格的に登場したのは、移民百周年を超えて3年目、2011年のことだった。同年4月17日付エスタード紙テレビ解説付録「tv/capa」は、「ブラジルテレビ史上初」「パステル屋役を越えて」との小見出しで紹介し、『Morde & Assopra』の特集を組んだ。高視聴率が義務付けられた夜7時台だ。7人家族の家長で、天理教の布教使イノウエ役が金子。一部を日本で撮影する凝りようだった。
 日系俳優の外見上の制約に関し、ホシ役のチバ・カミーラは同紙で「東洋系だからといって配役テストに落ちたことはないわ。だって、そういう役しか受けていないから」と語っている。ケイコ役の田中ルアナも「主役のテストを受けた時、私はその制約を感じたわ。『なんか東洋っぽい』という理由で、私に回されたのは脇役だった。ジャポネスが主役になれるのは、家電のテレビ宣伝だけね」とユーモラスに揶揄している。
 同ドラマには中国系二世シャオ・シェン(Chao Chen)が家族の一員のアキラ役で出演した。「僕はもう韓国人の役もやったことある」と同紙に語り、「東洋系俳優でありながら、それ以外の役者がやってもおかしくない役を獲得できたのは鈴木ダニエラだけ。彼女が最高」と語っている。同局ドラマ『Viver a Vida』(09年)の女医役のことだ。
 また、金子は「かつては社会の下層とか悪い役ばかりだったけど、最近は思想的を持つ役、メストレ的なものが増えた。ブラジル人作家の持つ日本移民へのイメージが変わった。演劇界が日本人の持つ個性を認めてくれた。特に若いプロデューサー、映画人が声をかけてくれる」。
 初めて日系家族を出演させたこのドラマの脚本家ワルシー・カラスコもサンパウロ州マリリア市育ち。「子ども時代から周りにたくさん二世がいて、生け花展に一緒に見に行ったり、日本文化讃美者だった」と述懐している。だから「戯画的な日本人像を越えた日系家族を描きたい」と考えたのだという。(つづく、深沢正雪記者)

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